ライジング! 第81回
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ライジング! 第81回

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松田が電話をかけると、夢岡はちょうど十コール目に出た。

『もしもし。どうしたサンちゃん。急に電話かけてきたりして』

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、アプリダウンロードしてくれた?」

『アプリ? えっと、何だっけ?』

その言葉を聞いて松田は肩を落とした。夢岡はウソをつくときに「えっと」という言葉をはさむ癖があるのだ。疑惑がどんどん確信へと変わっていく。

「前に話しただろ?」

『そんな話した気もするけど忘れちゃったよ。……そんなことよりまた飲みに行こうぜ』

後ろめたいときにすぐ話をそらそうとするのも夢岡の癖だ。

「氷上さんのことは覚えてるよな?」

『どうしたんだ? 今日は話がかみ合わないぞ』

「氷上さん。覚えてるだろ?」

松田は願いを込めて言った。しかしその願いはあっさり裏切られた。

『えっと、誰だっけ?』

「Eセサミの氷上さん。〝マンガホープ〟のプログラミングをやってくれた人。前に飲んだときに言ったよな?」

『えっと、よく分からないけど……その人がどうしたって?』

「三月一日はどこにいた?」

『急に言われても覚えてないって……。今日は一体どうしたんだよサンちゃん』

「オレは三月一日は銀座にいたんだよ。やすかママだっけ? 綺麗な人だよな。あの人に聞いてもいいんだぞ」

『…………そうか。見られちゃってたんだな』

「どうして……」

『どうしてって、オレらお友だち以前にライバル同士だぜ? そんな相手に会社の機密事項漏らしちゃったらダメだろ』

「ライバル以前に! オレはライバル以前に友だちだと思ってた!」

『認識のちがいだな。じゃ、オレ忙しいからまた今度な』

夢岡はそれだけ言うと、サッと電話を切ってしまった。かけ直しても、もう繋がらないだろう。かけ直す気はさらさらなかったが……。
松田は電話のやり取りをじっと聞いていた菅に自分の推論を話した。
実は大波出版のヤングウェーブ編集部に友人がいること。その友人に〝マンガホープ〟や氷上のことを喋ってしまったこと。それを知った友人が氷上を使って〝マンガホープ〟に嫌がらせを仕掛けてきたのではないかということ。
松田の話をじっと聞いていた菅は歯を食いしばり、涙を流して頭を下げた。

「申し訳ありません! 氷上さんは自分が連れてきたプログラマーです! その人がこんな……ローンチ日にスタッフごと姿を消すなんて……」

「頭を上げてください。悪いのは僕なんですから」

「いえ! 私が悪いんです!」

「……とにかく、もうここにいてもしょうがないので僕は会社に戻ります。菅さんはどうされますか?」

「私も戻って弊社の開発チームでアプリの不具合を解消できないか頼んでみます。ミスはリカバリーしなければ」

菅の前向きな言葉に、松田も自らを奮い立たせた。そしてEセサミを出ると、折よく通りかかったタクシーに飛び乗ったのだった。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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