ライジング! 第114回
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ライジング! 第114回

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四月某日、氷上に呼び出された上條と夢岡が、うす暗い喫茶店で彼と相対していた。個人経営の小さなその店は時代に逆行するように全席喫煙可で、客が疎らな店内では愛煙家たちが紫煙をくゆらせていた。氷上もぱっぱっと音をたててフィルターを吸うと、もわっと煙を吐き出して、大きなガラス製の灰皿に短くなったタバコを押し付けた。
上條は嫌味のようにせき込み、手をパタパタ仰いだ。

「で? 話ってなによ」

その言葉で氷上の頭に血が上ったようだ。

「分かるだろ! 早く報酬をくれよ! こっちは言う通りに動いたじゃないか!」

上條の横にいた夢岡が、まあまあと氷上をなだめるのだが、彼の怒りが一向に収まる気配はない。一方の上條は突き放すような態度だ。

「結果が伴ってないでしょ? こっちは〝マンガホープ〟のローンチを一か月半遅らせるように指示したのよ。それが二週間ぽっちの遅れだなんて」

「……それ以上は引っぱれなかったんだよ。ウチへの発注元はナノ&ナノだし、担当者は技術屋だ。あれ以上引っぱろうとすると目論見がバレることだってあり得た。こっちだってギリギリの判断だったんだよ」

「フン、それはまあいいわ。その代わりに、アプリに壊滅的なダメージを負わせるよう約束したじゃない。それはどうなってるのよ?」

「言われた通りしたさ! メンテに入れば、あのアプリは終わりだよ!」

「ウソね。まだ普通に動いてるじゃないの」

「知らねえよ!」

そう吐き捨てると、氷上はイライラした様子で次のタバコに火をつけた。そして深呼吸するように煙を大きく吸い込むと、ため息とともにそれを吐き出した。上條が顔をしかめて煙から逃げるように横を向いた。
それを見た氷上は、ほんの少し溜飲が下がったのか、落ち着いた様子で喋り出した。

「こちとら〝マンガホープ〟の開発費も入って来るかどうか分からないって状況なんだ。ナノ&ナノが照鋭社からお金を取るのをやめて、ウチへの支払いを拒否してきたからな」

「そうなんですか?」

夢岡が驚くと、氷上は舌打ちをして天井を見あげた。

「ああ。どっちも引かねえから、恐らく裁判になる。判決がどうなるかは分からない。だがどう転んでも、オレのEセサミでの評価はダダ下がりだ。居場所なんかなくなっちまう」

そう言うと氷上は、まだひと吸いしかしていないタバコを灰皿に押し付けた。

「だから、まとまった金を受け取ったら、転職活動でもするつもりだ。……どうだい? あんたの会社で雇う気はないか?」

冗談半分で言った氷上に、上條は冷たく言い放った。

「誰があんなみたいな無能を雇うのよ」

そのときだった。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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