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ライジング! 第70回

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紙には八十八種類の願いがぎっしりと書かれていた。
無病息災・家内安全・商売繁盛・開運招福・学業成就などのオーソドックスなものから、航海安全・無事帰還・雨乞祈願・芸道上達・勝訴祈願といったピンポイントな願いもある。中には国家安泰・世界平和といったスケールの大きなものまであった。

「この中の一つを神様にお願いするみたいだね。タイヨーはどれにする? さっき美味しいラムを出すお店探してたみたいだから、子羊発見とかにする?」

「そんなのないでしょ! う~ん、仕事系がいいから職務成就にしようかな。あ~、でも運気好転ってのも捨てがたいですね。そういうのひっくるめて心願成就にするって手もあるな……。コシさんはどうします?」

「私ぐらいになると世界平和なんだけど、一番縁起が良さそうな七十七番目にある天佑神助にしようかな」

「それってどういう意味ですか?」

「天の助けで思わぬ幸運が転がり込んできて助かることだ。よし、これにしよう!」

そうこうしているうちに列は進み、二人は受付にたどり着いた。受付で住所と名前と八十八種類の中から選んだお願いを伝え、初穂料を納める。すると待合室のような部屋に案内され、そこで手を清めて待つよう言われる。そして順番が来たら、いよいよ厄除けの祈祷となる。
祈祷殿での私語は厳禁だ。参拝者二十人ぐらいが同時に祈祷を受けるのだが、空気がぴんと張りつめていた。最初は緊張していた小柴だったが、普段はなかなか味わえない静謐なひとときに、最後は心地よさを感じていた。松田も真剣な表情で神主さんのお祈りを聞いている。
ほどなく祈祷が終わり、参拝者は本殿に案内される。そこでお祈りをして厄除の授与品を受け取れば終了だ。

「コシさん、なんだか僕生まれ変わった気がします」

野島なら「気のせいだろ」と一蹴するところだろうが、小柴は全力で松田の発言に乗っかった。

「お、そうか。言われてみれば、表情も凛々しくなってるぞタイヨー」

「そうですか?」

「うん、まるで別人だ。厄という厄が祓われたんだよきっと」

「なるほど! 厄除けも無事に終わったし、これで〝マンガホープ〟も完成まで順調に進みますね、コシさん!」

「そうだなタイヨー! 来月のローンチが待ち遠しいな!」

楽し気に二人で笑う小柴と松田だったが、そんな二人の予測がすぐに覆されることになるとは、このときは知る由もなかった。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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