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ライジング! 第77回

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『動かないって言ってる人はみんな役員クラスというか、年齢層が高いんだ』

それを聞いた松田は、失礼ながらも少し安心をしてしまった。

「なるほど……何というか、みんなおじいちゃんばかりってことですね」

『そうなんだ。みんな操作に慣れてないから動かないって言ってるんじゃないかと。あとは想定以上のダウンロード数だから、サーバーに負荷がかかってるんじゃないかって。とりあえず対応してもらうために、コシさんから菅さんに連絡入れてもらったから』

「じゃあ安心ですね」

松田はホッと胸を撫で下ろした。自分のアプリは動いているので、もしかしたら再現性のない重大なバグが起きているのではないかと少し心配だったのだ。

『そうだタイヨー、打ち上げは十九時からだからな。お前も主役の一人なんだから遅れるなよ』

「はい!」

ローンチ日は開発会社を動かすわけにはいかない。関係者を集めた大々的な打ち上げは落ち着いてからやるとして、今日は身内だけでささやかな打ち上げをやろうという話になっていたのだ。
受話器を置いた松田の頭は、打ち上げ会場の中華屋のことでいっぱいになっていた。


十九時になり、打ち上げ参加メンバー全員がそろった中華屋で、小柴が乾杯のあいさつをしていた。

「ついに本日、青年誌初の漫画アプリ〝マンガホープ〟が完成の運びとなりました。ここまで来られたのはひとえに、ここにいるみんな、そして今も一生懸命作業してくれているであろうプログラマーさんたちのおかげです。本当に大変なのはこれからなのですが、今日だけは少しだけハメを外しましょう。みなさん、大いに飲み食いしてください。乾杯!」

「カンパーーイ!」

全員の声が綺麗に重なり、あとはワイワイと騒がしい歓談となった。松田はコップのビールを一気に飲み干して「ハーーッ!」と息を吐きだした。すかさず横にいた野島がビールをコップになみなみと注ぎ直してくれた。

「お疲れ、タイヨー」

「お疲れ様です、野島さん。長かったですね……」

「そうだな。でもコシさんも言ってたけど、ここからが本当の戦いだからな。ま、お前は身に染みて分かってると思うけど」

「そうですよ。僕は一回大失敗してますからね! ハハハハ!」

松田は自分のミスで、開発したアプリを大失敗に終わらせてしまった過去があった。以前までの松田ならその話題を避け、犯したミスからは目を背けていた。しかし今では自ら笑い飛ばせるほどになっていた。

「成長したな、タイヨー。……今なら言ってもいいかな」

「何をですか?」

「コシさんが今回のプロジェクトにお前を指名した理由だよ」

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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