見出し画像

ライジング! 第50回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ

Eセサミがプロジェクトに合流してから早くも半年が経っていた。
毎週開かれる定例の会議では、プログラミングの進捗状況を氷上がぶ厚い資料を見せながら事細かに説明してくれていた。開発は順調そのものだ。当然ながら、プログラム言語が書かれたソースコードを見ても、どの程度作業が進んでいるのかは分からない。そのため、進捗は氷上が提示する書類ベースで確認するのだ。
松田はデジタル開発部の仕事に忙殺されながらも、定例会議で〝マンガホープ〟の進み具合を聞くのを楽しみにしていた。
そんなある日の会議でのこと、氷上の説明が終わると菅が小柴に目くばせをした。
小柴は軽く頷き、その場で立ち上がった。

「ではみなさん、そろそろアレを決めたいと思います!」

「ついにきたか~!」

菅は感慨深そうに微笑むと、野島も追随する。

「プロジェクトを立ち上げた当初は、夢のまた夢のようでしたけど、ついに決める日が来たんですね」

氷上は緊張の面持ちで小柴を見ている。
そんな雰囲気の中、松田が恐る恐る挙手をした。

「あの……アレって何ですか、コシさん」

「そんなことも知らないのか? 焼き鳥の味付けで塩じゃない方だ」

「タレです、それは。僕はアレって何なんですかって聞いたんです」

ご機嫌が極まった小柴は、小ボケを連発する傾向にある。これは一発じゃすまないなと、松田は長期戦を覚悟した。

「ああ、悪代官に着物の帯を引っ張られた町娘が言うやつ?」

「それは、あ~れ~! 僕が聞いてるのはアレ!」

「ひな祭りによく食べたっけ……」

「アラレじゃないです。アレを教えてください」

「今日の天気は確か――」

「晴れ! しつこいですよ、コシさん! もう参ったので教えてください!」

「何だもう降参か。タイヨーが音を上げるなんて珍しいな」

小柴の言葉に野島が反応した。

「マレですね、それは」

「何なんですか! 野島さんまで!」

もはや泣き出しそうになった松田を見てさすがに気の毒になったのか、小柴が「ごめんごめん」と謝りながら、アレについて教えてくれた。

「アレってのは、ローンチ日。つまり〝マンガホープ〟を世に出す日だよ」

「お……おお!」

松田は感激の声をあげた。もうこのプロジェクトはそんなところまで来ているのだ。野島も言っていたが、立ち上げ当初はアプリが完成する日なんて想像もつかなかった。それがもう、ローンチ日が決められるような段階になったのだ。

「小柴さんはどれぐらいを想定されていますか?」

菅が少し恐る恐るといった様子で質問をした。

「そーだねー、来年の三月頭あたりかな。春休み前には始めたいんだよ」

「良いと思います。春休みに入ればスマホ触る時間増えるだろうし。月の頭となると、いっそ〝ど頭〟の一日にするのはどうでしょう」

野島がすかさず意見を重ねると、菅は氷上の方を向いた。

「氷上さん、開発的にはどうですか?」

「何の問題もないです!」

いつものセリフで氷上は首を上下させた。それを見た菅は満足そうに微笑んで、最後に松田に話を振った。

「松田さんはどうでしょう?」

「あ、え~っと、良いと思います!」

全員の意見がそろった所で、小柴が机に両手を勢いよく「バン!」と置いた。

「よっしゃ! 〝マンガホープ〟は来年の三月一日にリリースだ!」

こうして〝マンガホープ〟のローンチ日が決定した。松田は嬉しい反面、審判の日を定められたような謎のプレッシャーを感じていた。

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ

この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
集英社青年漫画誌『週刊ヤングジャンプ』の公式アカウントです。連載作品の各種最新情報はもちろん、様々な企画や記事も掲載していきます! 公式サイトはこちら:https://youngjump.jp/