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ライジング! 第78回

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「し、知りたいです! ぜひ教えてください!」

松田は思わず前のめりになった。仕事で大失敗をして、デジタル開発部で干されていた自分を、青年漫画誌初の漫画アプリを作る、というビッグプロジェクトに誘ってくれた小柴。デジタル開発部の上司が暇な自分を押し付けただけだろう。そう言った松田に小柴は、ちゃんとキミを選んだ理由があると言ってくれていた。その理由を結局今の今まで聞かずに来てしまったのだ。

「いいかタイヨー。お前が今回のプロジェクトに選ばれたのは、前に作ったアプリで大失敗したからなんだよ」

「……え??」

意外すぎる理由に、松田はぽかんと口を開けた。

「コシさんは常日頃から言ってることがあるんだよ。〝失敗できるヤツは強い〟って。失敗っていってもケアレスミスとかは別だぞ。コシさんが評価するのは、挑戦した上での失敗だ」

「挑戦した上での失敗……」

「ああ。誰もやったことないようなことに挑戦して、見事に失敗して前のめりに倒れる……そんな人間が好きなんだよ、コシさんは。入社して、言われたことをきっちりこなして、ノーミスで何年も過ごす。近頃はそんな人ばっかりで、失敗するヤツがガクンと減ったって愚痴ってた」

「でも、失敗はしないに越したことはないんじゃ……」

「〝成功は最低の教師。 優秀な人間をたぶらかし、失敗などありえないと思い込ませてしまう〟」

「コシさんが言ってたんですか?」

「いや、これはビル・ゲイツの言葉だ。それから、電球を発明する際に千回失敗したエジソンはこんなことを言っていたらしい。〝千回失敗したんじゃない。うまくいかないやり方を千通り発見したんだ〟。……つまり、立派な先人たちも、成功の危険性や失敗の重要性には気付いてるんだよ。だから〝マンガホープ〟の開発を始めようとなったときに、コシさんはいの一番にデジタルの松田って子をメンバーに入れよう、ってオレに言ってきたんだよ」

「そうだったんですね……」

松田自身、これまでは自分の失敗は最低なことだと思っていた。しかし、〝マンガホープ〟の開発に携わってからは、あれはあれでいい経験だったんじゃないかと思い始めていた。

「なんか僕、嬉しいです。あの失敗があったから今があるんですね」

「そうだぞ。現にお前は一緒に仕事のしやすい、優秀な人間だったよ。落ち込みやすいけど復活が早いから付き合いやすかったし」

クールな野島にまっすぐ褒められ、松田は照れ隠しでチャーハンを小皿によそい始めた。なんだか幸せだ。この幸せが一秒でも長く続けばいいのに。松田は切にそう願った。
しかし運命は残酷だ。
松田の切なる願いは、直後に砕け散ることになる。きっかけは、小柴にかかってきた一本の電話だ。

「あ、ガースーから電話だ。みんなちょっと声抑えて!」

喧噪の中、そう言ってスマホを耳に当てた小柴は、自然とみんなの注目を集めることになった。そのため、小柴の顔がみるみる青ざめていくのを、全員がしっかりと目にすることになった。
そして小柴は、突如素っ頓狂な大声をあげるのだ。

「何ィ!! 開発会社が飛んだ!?」

運命の日が、ついに幕を開けた。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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