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ライジング! 第98回

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「ど、どういうことですか!?」

松田がパソコン画面と河原崎の間に顔を挟み込むと、ようやく彼と目が合った。

「Eセサミから電話ってことは、匿名のタレコミでしょ。その人がメンテはダメだと言っていた。つまり、メンテナンスにはトラップが仕掛けられている可能性が高い。例えば、メンテに入ったら永遠に抜け出せない……みたいな。……やってみる?」

「や、やってみません!」

あわてて河原崎を静止した松田は、呆然自失でその場に座りこんだ。

「……ということがあったんです。自分はまた大きなミスをしでかすところでした……。もう僕は、このプロジェクトにはいない方がいいかと思います。それを言うために、お二人が戻る時間を見計らってお待ちしていた次第です……」

顔を俯ける松田に、小柴が低い声で言った。

「クビ」

松田は肩を震わせながら、溢れそうになる涙をぐっとこらえた。しかし、小柴のセリフにはまだ続きがあった。

「――の皮一枚で助かったな」

「……え?」

松田が顔を上げると、小柴は笑顔でほっと溜息をついた。

「危なかった~。もうちょっとで〝マンガホープ〟が終わる所だったんだろ? ガースー……いや、匿名電話の誰かのナイスプレイだな。……待てよ、神社で厄除けをしたおかげかもな。天の助けで思わぬ幸運が転がり込んできて助かる……まさに私が願った天佑神助だ」

「でも、そもそも僕がメンテを勝手に入れようとしなければよかったって話で……」

「それはそうだ」

小柴が初めて厳しい口調になり、松田の目をまっすぐ見つめた。

「勝手なことをされたら話し合いをした意味がない。キミがやろうとした行動は大問題だ。だからタイヨー、キミには厳重注意をする。何でも自分だけで解決しようとするな。私たちはチームで動いているんだ。前にも言ったが、一人で抱え込むのは良くないぞ」

「……はい」

「でもまあ今回は幸いにも、キミの暴走は未然に防がれたわけだし、注意だけにとどめておく。もちろん、プロジェクトを離れることは許さない。分かったか?」

「……はい」

松田が小さな声で返事をすると、小柴は表情を崩した。

「よし! ……それにしても匿名の電話って誰だろうな?」

「菅さんは何か言ってなかったのかタイヨー?」

野島も謎の電話の主が気になっているようだ。敵しかいないと思っていたEセサミに謎の味方がいたとは。

「そういえば、関係あるかは不明なんですけど、菅さんが今朝Eセサミに電話したときに信じられないことを言われたそうです」

「信じられないこと?」

「はい。氷上さんいますかと聞いたら休みと言われて、じゃあ〝マンガホープ〟について分かる人いますかって聞いたらしいんです」

松田は菅に聞いた話を思い出し、くやしさで奥歯をギリッと噛んだ。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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