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ライジング! 第69回

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「タイヨー! どうしてここに!?」

「舞台俳優やってる友だちがこの辺の劇場で舞台やるっていうんで来てみたら、日付がちがってたんですよ。でもせっかく来たから、前に行ったことのあるお店でご飯でも食べようと思ったんですが、場所が微妙に思い出せなくて迷ってたんですよ」

「迷ってた!?」

小柴はその言葉に激しく反応した。夕子さんが「厄除けには迷える子羊を連れていってあげなさい」と言っていたからだ。

「店の名前も思い出せないから、検索もできなくて。おいしいラムを出す店なんですけど」

「ラム! それって子羊のことだぞタイヨー!」

「そうですけど、それが何か?」

「子羊で迷ってる……これはもう殆ど迷える子羊なんじゃ……」

「え? 何か言いました?」

「いやいや、別に何も。ところでキミが着てるその暖かそうなセーター……素材は」

「ウール百パーセントです」

「ウール! しかも百パーセント!」

「けっこう高かったから迷ったんですけど、買っちゃいまいた」

「ウールと迷い……決まった……これはもう完全に決まりだ」

「何をぶつぶつ言ってるんですかコシさん。なんかちょっと様子おかしいですよ」

訝る松田をよそに、小柴は力強く言った。

「タイヨー、運命を変えに行こう」

「え……何言ってるんですか?」

「ええい! 鈍いヤツだな! 厄除けに行くんだよ」

「え……厄除け? 僕は別に厄年とかじゃないんですけど」

「いいからいいから! やっといて損はないって! それに夕子さんの占いは当たるんだから!」

「誰ですって? なんか今日ちょっと変ですよ」

訳が分からないといった様子の松田を連れ、小柴は強引に神社までやって来た。

「ほら、入るぞ」

小柴が先頭に立って厳かな雰囲気を漂わせる鳥居をくぐると、迷える子羊の松田も大人しくついてきた。

「駅の近くにこんな立派な神社があるんですね」

「太陽神の天照大御神を祀ってる神社らしいぞ」

小柴は行きの電車で調べた知識を披露した。

「おお、太陽! なんか親近感湧きますね。……でもなんで急に厄除けに行こうと思ったんですか?」

「まあ、話せば長くなるんだけども……」

境内には八難除のご祈祷を待つ人が列をなしていた。その列の最後尾につき、小柴は松田にスナック〝かえで〟での出来事を説明した。

「それでコシさんは占いを信じてここに来たってわけですね。なんかそういうの信じなさそうだから意外です」

「信じる信じないは別として、こういう伝統的なことってけっこう大事だぞ」

小柴は少し動いた行列に合わせて歩を一歩進めた。すると壁に貼られた紙が見えてきた。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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