ライジング! 第97回
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ライジング! 第97回

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「会社泊まり明けの連載ネーム会議はきついな~」

自分の右手で左肩をもみながら小柴が呟くと、隣の野島が「そうですね」と相槌を打った。とはいいながら、野島は涼しい顔をしている。

「まだ元気そうだな、ヤジマ」

「ノジマです。今朝はウナギ食べたんで、まだパワー残ってるんですよ」

「ゲッ! 泊まり明けの朝からウナギ! お前の胃はどうなってるんだ佐渡ヶ島」

「ノジマです。疲れたときこそスタミナつくもの食べないとダメですから」

二人が会話しながら編集部へ戻ると、松田が顔面蒼白で小柴の机の横に座っていた。

「どうしたタイヨー」

野島が声をかけると、松田は体をビクッと振るわせて二人の方を見て、すぐにふらふらと近寄って来た。

「僕は……僕は大変なことを……」

虚ろな目の松田を見て、ただごとではないと思った小柴は、とりあえず彼を近くの椅子に座らせた。

「落ち着けタイヨー、何があった!?」

小柴が聞くと松田は目を潤ませた。

「僕は大馬鹿野郎です……〝マンガホープ〟を、〝マンガホープ〟を終わらせ――」

そこで松田は言葉を詰まらせた。嫌な予感がした野島は、急いでタブレットを取り出すと〝マンガホープ〟のアイコンをタップした。

「…………なんだ、普通に動くじゃないか」

野島がほっと溜息をつくと、松田の目から涙があふれた。

「危なかったんです! もう少しで僕は、〝マンガホープ〟を終わらせてしまうところでした!」

松田が河原崎にメンテを入れてもらおうと彼に声をかけた瞬間、背後で何かが落ちる音がした。見ると一か月前に小柴と行った神社で帰り際に貰った木札が床に落ちていた。厄除け以降、小柴の机の後ろに、彼を見守るようにずっと立てかけられていたのだが、それが急に落ちたのだ。
後から元に戻しても良かったのだが、放置し過ぎると縁起が悪い気がしたので、松田は河原崎を待たせて木札を元の場所に戻した。
そして再び河原崎に声をかけて、メンテに入るようにお願いしていると、ポケットの中のスマホが着信音を鳴らした。見るとそれは菅からの電話だった。

『もしもし! 松田さん! メンテのことで話が!』

「あ、ちょうど今メンテナンスに入ってもらおうとして――」

『ダメです!!』

耳がキーンとなるほどの大声で菅は言った。松田は思わず顔をしかめた。

「どうしたんですか急に」

『実はさっき、気になる電話がかかって来たんです』

「気になる電話?」

『はい。非通知でかかって来て、私が出るといきなり「要件だけ言います。〝マンガホープ〟ですが、絶対にメンテは入れないで下さい。絶対に!」とだけ言って切れたんです。背後に聞き覚えのある環境音が流れていたので、誰かがEセサミの作業部屋からかけてきたんだと思うんですが……』

「まさか氷上さん?」

『いや、もっと若い声でした。冗談とも思えない感じだったので、急いでお知らせしようと電話した次第です』

「そうですか……」

松田は電話を切ると、作業中の河原崎に謎の電話の話をしてみた。河原崎は画面から目を離さず、頷きながら話を聞くと、確信めいた口調で言った。

「メンテ入ったら、このアプリは終わるね」

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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