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あの噂は本当なの?持ち込みの際の不安を無くすQ&A【シンマンnote#2】

 すでに前回の記事で「長いよ!」というツッコミを部内でもらいましたが、恐ろしいことにもう一発「持ち込み」についてです。前回はどちらかというとこちらの「意気込み」が主体でしたので、もう少し不安解消になる記事にしたいと思います。

 さて、今はインターネットもありますので様々な持ち込み体験談がシェアされるようになったり、漫画家さんを主人公にした漫画作品などで様々な「噂」もまたよく耳にするところです。

 最初に結論を言えば、出版社ごと、そしてそれ以上に編集者ごとにそこで体験する雰囲気や出来事は全然違うものです。編集者と言っても好みは均一ではないですし、大前提として人間的な相性もある。なのでこの場はある種のお見合いでもあります。一人の編集者、一つの出版社の見解が作品のすべてではありません

 友人のあの作家はああいわれたのに自分は言われなかったからダメだ、というものではなく、あまり他の人がどうだったかという話と比較して気にしすぎないのも大事です。

 というのを踏まえた上で、前回記事を読んでくださって「ちょっと一回、行ってみようかな」と思った方にもう一押し。不安を解消する手助けとなればと、よくある質問や噂の真相についてお答えしたいと思います。

 ●服装はどんなものがいいのでしょうか?

 自由です。就職活動ではありませんし、大切なのは作品ですから、どんな服装でもそれで注意されたりすることはありません。一応、弊社も一般企業っぽいエントランスがあり、緊張すると思いますが受付の方が不審がることもありません。

 個人的な余談ですが、ヤングジャンプ では編集者も入社してしばらくはスーツですが、私の同期が夏頃までスーツでいたところ、当時の部長に「いつまでスーツなんかきてるんだ!持ち込みの作家さんが緊張するだろう?」と言って怒られたなんてエピソードもあります。そのくらい、編集者もラフな服装です。

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↑③のコマの格好、いずれでももちろんOKです。あまり気にせず普段通りで臨んでください。(ヤングジャンプ 本誌連載・漫大河より イラスト/江久井)

●電話でアポを取る時に気をつけたほうが良いことはなんですか?

 夜型の作家さんも多いこの世界では編集者は昼頃から業務に入ることが多いです。ですので、平日の昼過ぎくらい以降に電話をすると繋がりやすいかと思います。ですが、今はこうした状況の中、在宅ワークの編集者も多くなってきましたのでオンライン持ち込みから申し込んでいただき、こちらからの返信をお待ちいただくのが、一番良いと思います。https://shinman.youngjump.jp/apply2/ 

 このほうが変に緊張しなくて良いかもしれないですね。電話に関してはビジネスマナーのようなものはあまり気になさらずに。お会いするのに必要なことはこちらからお聞きしますので予定をあわせて完了となります。

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↑ここで何かを評価することはありません。気軽にお電話いただければ嬉しいです。(ヤングジャンプ 本誌連載・漫大河より イラスト/江久井)

●デジタル原稿をタブレット端末で見てもらうことは可能ですか?

 もちろんOKです。いまや多くの作家さんがデジタル原稿だと思いますので、わざわざプリントアウトしていただくことはありません。WEB志望であればスマホで見せていただくなどでも良いくらいです。

 デジタル原稿のプリントアウトの際にお気をつけいただきたいのは家庭用の質の低いプリンターで出力した結果、線が汚くなったりトーンが潰れたり細かいタッチが消えてしまうようなケース。

 作家さんの意図した最高の形で拝見できないのはもったいないのでコンビニのネットプリントなどでも構いませんので、できるだけ良い環境で出力していただければと思います。オンライン持ち込みであれば予めデータで送っていただく形になりますので、その意味でもおすすめです。


●「飲み物を貰えると脈あり」「編集部フロアに案内されるようになったら脈あり」って本当ですか?

 完全に編集者によります。集英社には喫茶室という社内喫茶店みたいなものがあってメニューをだしてくれることもあります。アルコール以外はほぼなんでもあり、「氷コーヒー」(氷そのものがコーヒーを凍らせて作っていて時間がたっても薄くならない)などの名物(?)などもあります。

メニュー

↑意外に豊富なメニュー。流行りを取り入れていく一面もあり、タピオカミルクティーのような懐かしいものまで!

 勧められた場合はご遠慮なく。大抵は編集者自身が急に飲みたくなっただけ、というのが多い…いえ一般的なもてなしの気持ちです。まったく気にせず話し続ける人もいます。いずれにしてもそれ自体がその作家さんへの評価と関係する、ということは全くないです。

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↑すごく緊張している様子を察して…ということもあるかもしれません。どうかご遠慮なく!(ヤングジャンプ 本誌連載・漫大河より イラスト/江久井)

  ただ話が盛り上がって長時間に及んだ場合は単純に喉が乾くので途中で勧められることもあるのではと思いますが、飲み物を出す出さないで何かメッセージを発してるわけではないです(笑)

 最初は1階のブースでの打ち合わせとなることが多いかと思います。ただここで行うことを好まない編集者もいます。単純に右も左も持ち込みをやってるために、気が散るというのもありますね。隣とこっちで真逆の話をしてることもあり、漫画の作り方は様々であることを知れたりもします。

●「完成原稿」でなくてはならないのですか?ネームや原作ではダメですか?

 いずれの形でも構いません。ただし「文章や脚本の原作」の場合は事前にお伝えいただけるとありがたいなとは思います。たまにものすごく長大なものや大量の作品を原作でお持ち込みいただくことがあり、その場では読みきれないケースがあります。事前にお送りいただくか、ある程度絞って持ってきていただくなどご案内しますので、お伝えいただけるとありがたいです。
 「ネーム」の持ち込みの場合でも「ネーム原作」ではなく最終的に作画まで執筆される予定の場合は絵柄や画力がわかる資料を持ってきていただけるとお話がしやすいです。

●名刺をもらえなかった…もう脈はないのですか?

 一般的に就職活動などで面接官が名刺をくれるわけではないように、「ご縁」の象徴として機能してる面はまだ色濃くあります。ただ単純に社会人として仕事でお会いした方に名刺も渡さないのは失礼、という考え方で基本的にみんなに渡す編集者もいます、割とおおらかに来るもの拒まずで作家さんの成長に付き合うタイプが多いですね。何かルールがあるわけではない、というのが正直な実状です。

 実際のところ、作品が伝わらなかった編集者に持ち込み続けるよりも可能性を感じてくれる編集者に見てもらったほうがゴールは確実に近いですから、その場合は文字通り「ご縁」がなかったと割り切り、他の編集部に照準を変える。

    もしくはそれでもなおその雑誌への思いを持っていただけるなら他の編集者に見てもらうという選択肢もあると思いますし、希望される方もいます。その場では言えなくても、再び編集部に電話をかけて別の人間に持ち込んでみる、という方もいますね。持ち込みという場の雰囲気もかつてのような一方的なものではなくなってきてるように思います

 難しいのは、その場ではほとんどダメ出しで終わったにも関わらず、ちゃんと名刺をくれたりする場合。なかなかそこから付き合っていくのは気が重いですが、限られた時間で少しでも良くしたいという思いの現れではあり、評価しているのは確かではあります。「そのダメ出しが納得のいく内容であったなら」、めげずに向き合ってみることも大事かもしれません。

漫画4

↑緊張ゆえか意外と忘れ物も多いのでご注意を。この場合は編集者が悪いと思いますが…!(ヤングジャンプ 本誌連載・漫大河より イラスト/田中チヌ)

●もっとベテランの編集者や副編集長以上の人に見て欲しいのですが

 原則として電話を取った人間が対応する、という意味で若い編集者が対応することが多いと思います。(編集部によっては持ち回りでベテラン編集者が出てくることもあるとか)作家さんの年齢によっては年下だったり昨日今日編集者になったような見た目のやつにアレコレ言われるのも抵抗がある方もいると思います。その点は申し訳なく思います。

 若い編集者が対応するのには意味がありまして、やはり「なんとしてでも連載にこぎつけてヒットさせたい」という熱が彼らのほうが強いから。そして、何より未来を担う漫画の息吹をキャッチアップするのは若いセンス同志のほうが共鳴があるから。などの理由があります。

    また連載作品を複数担当していたり、現場の一線で作品や作家さんとダイレクトに接しているのは若い編集者のほうが多いので、見た目頼りなく見えても、現場の肌感覚が一番尖っているのは彼らでもあります。

     例えばキャップや副編が持ち込みを受けて担当させていただいた場合、確かにメソッドとしてはより的確な言い方で伝えたり、雑誌の求めるものに近い形にチューニングすることに長けているとは思います。しかし一方で、そこからその作家さんが賞に出すというようなステータスの場合、このポジションの編集者は日頃後輩の回すネームにさらに注文をいう立場ですから、自分が回すネームでできてなければ立場がありませんね。なので、これも人にもよりますが「通す」基準が高くなる傾向がどうしてもあります。

 したがって、持ち込みという場に無闇にベテラン編集者が出てくることは良いご縁とはならない場合が多い。熱量を最優先でフォーカスできる若手編集者が向き合うのがベストである、それが今のところの弊誌の方針となっております。

●原稿を賞に出したいから預からせて欲しいと言われたのですが?

  私も何度かありますが、本当に作品が気に入った時にこのフレーズが出ます。「賞」だけでなく読み切り枠で回す、あるいは連載化しようなどまであると思います。そこまでいう時は編集側にある程度、勝算がある時なので、結局何にもならないということはないのではないかと。

 持ち込みというと、ダメ出しをされて直させられてそれでも結局載るかどうかもわからない、というイメージもあると思いますし、実際、じっくりそうしたやりとりを重ねることが多いですが、「漫画は面白ければOK」であって、何歳だとか何作目だとか何年修行したとかそういう過程は本質的な評価基準ではありません

    初めて描いたものだとしても十分に面白ければ連載になります。特にWEBという選択肢もある今ではそんなミラクルも珍しくありません。

 ごく当たり前のことですが編集者は「ダメ出し」が仕事ではなく、「面白いもの」を載せるのが仕事ですから、言うことがないのであればもちろんそれが一番です。

●「次は●●で見せてください」の意味するところは?

 作品や作家さんの状況によって様々な「課題」を言われることがあります。「ネームで」「プロットで」「新作を」「キャラ表を」など様々です。一番多いのはやはりネームでしょうか。ご時世もありますが対面とは限らず、メールで送って電話で話す、みたいな提案もあります。締め切りまで指定されることもあるかもしれませんね。
 
 作画がすごく優れているがネタがあまりハマってないのでは?という場合には企画やプロットからというケースもあります。

     前段でも書きましたように一人の作家さんの得意不得意や好みを知るにはある程度やりとりを重ねることが必要ですので、幅を見るためにも「フリーで好きなの描いてまた見せて欲しい」ということもありますし、かなり細かく次回のネタを打ち合わせてしまうこともあります。

     前回にも描きましたがその人の状況よってカスタムして対応するのが編集者というものですので、どれが一番脈あり、ということではありません。

 いずれにしても「また読みたい」「もっと読みたい」と思わせたら、持ち込みとしては成功と言って良いのではないかと思います。

     とはいうものの…その場ではやはり、精魂込めて描いた作品の改善点をたくさん言われるので、本当はすごく評価したうえで「また読みたい」と言っていたとしても、それが耳には入らない、信じられない、そんな気持ちになってしまい、そのままご縁がなくなってしまうことも結構あります。

 編集者はその作品をより多くの読者に届けることを目的として、必要なことをお伝えすることと同時に、モチベーターとして鼓舞するのも仕事なのですが、持ち込みという限られた時間の中では前者が多くなってしまい、後者に届かないことがよくあります。100の評価より1の批判のほうが心に残るもの、我々ももっと自覚的であらねばとも思います。

 すぐ整理できなくても一晩寝て、冷静になって、その編集者のいうことに一理あるかも、と思っていただけたなら、ぜひまた作品を見せて頂きたいなと思います。作品を通じて定期的にコミュニケーションを取る中で、「モチベーター」としての編集者の一面も知ることができるはず。

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↑編集者は皆、若い才能が好きです。厳しい言葉も多いですが褒め言葉もまた本音です。(ヤングジャンプ 本誌連載・漫大河より イラスト/田中チヌ)

     資料を買ってくれたり、今は難しいですが、ちょっといいご飯を食べながら仕事としての打ち合わせよりももう少し踏み込んだ漫画の話をしたり…という物理的な部分はもちろんですが、そうした関係性の継続によって作品を誰よりも理解してくれるパートナーになれたならそれがベストだと思っています。ですがそれには時間がかかります。すこしづつ、対話を重ねて関係性を深めていければと思います。

次回は
「今、あえての「漫画賞」出してみませんか?編」です! 



 

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