【スポーツ漫画の極意編】森川ジョージ『はじめの一歩』×二宮裕次『BUNGO』豪腕特別対談Vol.2
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【スポーツ漫画の極意編】森川ジョージ『はじめの一歩』×二宮裕次『BUNGO』豪腕特別対談Vol.2

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ヤングジャンプの人気野球コミック「BUNGO」の二宮裕次先生と、言わずと知れたボクシング漫画の超名作「はじめの一歩」の森川ジョージ先生の対談第2回!今回はスポーツ漫画家のお二人の作品制作における取材から執筆の精髄を語ります!

⇩前回までの記事はコチラ!

そりゃ自分でボクシングジム持ってるからね。ジムの会長だし、日常が取材ですよ。(森川)

―スポーツにおける技術描写をするために、どんな形で情報収集をされているのでしょうか。

森川:シニアリーグは取材しているの?

二宮:連載前にいくつか観に行かせていただきました。予選や練習、全国大会を観た程度です。あとオンラインサロンにも入っています。

森川:二宮先生のオンラインサロン!? 入りたいね!

二宮:僕じゃなくて「NEOREBASE」という、野球を研究していらっしゃる方たちのサロンです。

そのサロンでは技術的なものはもちろんですが、データ、感覚的なものまで、野球全般に関わるお話が聞けます。サロン以外だと元高校球児の方にお話を聞いたりもしています。

森川先生はさらに競技に近いところで取材をしていますよね。セコンドもされていますし。

森川:そりゃ自分でボクシングジム持ってるからね。ジムの会長だし、日常が取材ですよ。

二宮:一歩がリングを見る角度は、完全にセコンドの方からの角度ですもんね。

森川:そういうときもあるよね。あと、僕はいつもジムに行けるわけではないので、LINEに「今日はこんなスパーをやりました」と選手のスパーリング動画がダーッと送られてくるんです。5人×15ラウンド分のスパーリングを全部見て、「ここダメなんじゃない?」とやりとりをしていますね。ちょっとオンラインサロンに近いのかな(笑)?

二宮:ボクシングの技術は、昔に比べてどう変化しているんですか?

森川:もう全然違うね。どんなものでもそうなんじゃないかな。僕は漫画でもスポーツでも、若い人のほうが絶対に凄いと思ってる。

二宮:そうかもしれないですね。

森川:オールドファンは「モハメド・アリが一番凄かった」と言うけど、今の選手だったら普通にKOできると思うよ。技術は更新されていくものだから。

かつてアリが打っていたジャブはアリにしか打てなかったけど、今の時代だと動画がある。アメリカの会場でお披露目した技術やパンチでも、次の日にはイギリスの選手が打っていたりする。そういう世界になってる。

―ボクシングの戦い方も10年前とは違うものになっているということですか?

森川:変わってきていると思う。今はスピードよりもポジショニングを重視してるよね。最小限の動きで、自分のパンチはあたるけど相手のパンチはもらわない位置に飛び込む。そして自分だけがやりたい放題やって離脱って感じが主流かな。

個人的にはマニー・パッキャオが出てきたときにボクシングが大きく変わった印象です。彼はサウスポーで特殊なポジショニングでKOをバンバンしていった。でも全世界のサウスポーがそれを真似するから、今度はオーソドックスな右利きの奴がそういったボクサーの対策を進めていって…。だから、今の子は凄いよね。こう言っちゃなんだけどさ、何十年も前のバッターは大谷翔平のボールは打てないでしょ(笑)。

二宮:見たことないようなボールを投げてますからね。

―野球界もボクシング界も、大谷翔平選手や井上尚弥選手のように、これまでの日本人の常識を覆す若い選手が出てきていますね。スポーツ界は進化がわかりやすいように思います。

二宮:サッカーも戦略とかどんどん新しくなってますよね。

森川:バレーボールも、どのジャンルもそうだよね。リアルタイムでパソコンを使って指示しているからね。観客席で上から見て、それが監督に送られてきて。

二宮:森川先生は、そういった技術の進化で漫画を描く際に困ったことってありますか?

森川:僕は1990年代のボクシングを描いているから、あまり気にしない。ニノ(二宮)は気にしてるの?

二宮:そうですね。どうしよう…と思っています(笑)。

森川:僕らが読んでいた『ドカベン』の頃は、ツーシームはないわけだから。技術は日進月歩だし、そういうのを取り入れるとなると大変だよな。

二宮:いろいろ考えた結果、ど真ん中ストレートで誤魔化します(笑)。

―取材でも今の子たちは上手いと感じますか?

二宮:めちゃくちゃ上手いです! 信じられないです。僕たちのやってきた頃とは比べ物にならない。

森川:平均的な底上げが凄いんだよね。ボクサーもそうですよ。

二宮:動画が見られるのが大きいですか?

森川:動画もそうだけど、指導者のレベルが上がってるよね。以前は根性論だったでしょ。今は技術論がキチンと確立されているから、それに納得して選手もついていく。ただ、本質として変わらない部分もあって、図抜けた豪速球は誰にも打てないし、もの凄く強烈なパンチがあたったら立てない。そういう普遍的な部分もスポーツの魅力だからね。

写真を一切見ないようにしていますね。動画もあまり観ない。試合は観るけど、最初に取り込んだイメージを大事にしたいので、何回も観ないようにしています。(森川)

―リアリティと漫画的描写のバランスで気をつけていることはありますか?

森川:写真を一切見ないようにしていますね。動画もあまり観ない。試合は観るけど、最初に取り込んだイメージを大事にしたいので、何回も観ないようにしています。

―静止画は漫画の参考にしにくいのでしょうか?

森川:止まっているものを見て描くと、どんなにスピード線を入れて流しても絵が止まっちゃうんですよ。だから自分の中でのイメージを大事にしている。間柴のフリッカージャブの描写は「漫画っぽい」と言われることが多いんですけど、僕がイメージするフリッカージャブはあんな感じに映っているんです。

二宮:森川先生は運動神経がいいので、それが漫画の描写にもつながっていると思います。森川先生のあとだと言いにくいんですが、僕は写真を見て描いています。見本がないと、僕の画力だとどうしても説得力に乏しくなっちゃうので。ただ、写真の通りに描くと動きが綺麗過ぎることもあって、やっぱり止まっているように見えてしまうんですよね。そんなときはわざと重心をずらすなどして描いたりもします。

―『はじめの一歩』では、肉体を透過させる描写も見られますね。

森川:初めて使ったのは千堂と一歩が戦っているときだったかな? 骨が折れたんだから、実際に折れているシーンを描こうと思っただけなんだけど。

二宮:内臓の描写も多いですよね。

森川:ボディブローがきく原理を追求していくと、横隔膜が関係していることがわかって。人間は横隔膜の上下運動で呼吸するから、それが鈍ると苦しくなる。「待てよ…横隔膜ってどう描けばいいんだ?」って思って、資料として医学書もいっぱい買いましたよ。

二宮:悩みます! だから嘘みたいな情景を描くしかない(笑)。

―マニー・パッキャオとグローブを交えた人に話を聞く機会もあったとか。

森川:その当時のパッキャオは、まだそれほど名前が知られていなかったんだけど。最初のジャブを受けた瞬間に「パカッて頭が割れた」と感じたらしくて。「これはいかん!」と思ったら、次のパンチでは「顔がなくなったかと思った」って(笑)。

二宮:『はじめの一歩』では、感覚をそのまま表現していますよね。僕も草野球で似たような体験をしたことがあります。相手が元バリバリの高校球児で僕が打席に立って、ワンバウンドすると思ったボールがど真ん中にドカンッ! って入ったんです。そういう感覚は『BUNGO』にも生かしています。

森川:当然だけど、ボクシングでも野球でもプロレベルを体感している読者って少ないよね。一歩の場合でも「石で叩かれているみたいだ」って描くけれど、石で叩かれたことがある人なんていないんだよ。どうしたらそれを伝えられるか凄く悩まない?

二宮:悩みます! だから嘘みたいな情景を描くしかない(笑)。

第3回に続く!

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