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ライジング! 第38回

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このままではいけないと感じた松田は、一計を案じた。一つでも成功例があれば、世間からの評価も変わるだろう。そう考え、ネーム担当を探す企画に参加してくれていた作家に、仮でいいから一つネームを選んで、一ページでいいから急いで作画してくれと頼んだのだ。いつもは担当編集を通して連絡していたのだが、焦っていた松田は作家に直接頼んでしまっていた。頼んだ内容もめちゃくちゃだが、編集部の頭越しに作家を稼働させようとするのも大問題だ。もちろんそのことはすぐ発覚し、松田は編集部に大目玉を喰らうことになったのだ。
さらに悪いことに、企画説明時には「ネームはじっくり選んでいい」と言われてたのに、いきなり「急いで選べ」は乱暴じゃないか……と作家が不満を持ち、企画を降りてしまったのだ。その経緯は、作家本人のSNSから世間の知ることとなり、デジタル開発部は批判にさらされた。そして、大々的に立ち上げた企画がおシャカとなったことで、残っていたユーザーの不満も一気に高まり、アプリはまたたく間に過疎化してしまった。結果的に〝漫to漫〟は配信停止となり、サービスはすぐに終了した。

「……ってわけで、社内では肩身の狭い思いをしてるんだよ、オレは」

「ハンパねえな……」

「細かい損害額はわからないけど、億単位なのはまちがいない。あとはアプリの開発会社さんにも申し訳ないよな……。良いもの作ってもらったのに、オレのせいで台無しになってしまって」

網の上では、ほとんど炭になった特上ハラミが白い煙をあげている。松田はそれを箸でつまんで口に入れると、やけくそのように噛み締めた。焦げ臭い香りと嫌な苦みが口中に広がってまとわりつく。

「……まあ飲め」

夢岡はまだ口をつけていなかった生ビールを松田の前にドンと置き、自分はまた別に注文をした。焦げたハラミをビールで流し込んだ松田は、自虐的に夢岡に微笑みかけた。

「どうだ? オレの失敗すごいだろ?」

「いや、まあ、何というか……これと決めたら突っ走るサンちゃんらしい失敗ではあるけどな。逆にアリだと思うぜ」

そう言って夢岡はドリンクメニューを開いた。彼が「逆に」という言葉を使うのは、ちょっと不機嫌になった時だった。松田との失敗談合戦に負けたと思い、へそを曲げているのだ。

(ドリーも変わんないな)

松田が苦笑いをしていると、夢岡はマッコリをボトルで注文した。

「ボトルって、全部飲めるのか?」

「何言ってるんだ! サンちゃんも一緒に飲むんだよ」

「マジかよ」

「マジマジ。それよか聞いてくれよ――」

夢岡の話は、自慢話へと移行した。失敗談で負けたので、今度は成功談で勝負しようということなのだろう。根が単純な夢岡の心の動きは手にとるように分かる。やはり付き合いやすい人間だ。松田がそう思い、ジョッキに残っているビールを飲みほすと、折よくマッコリのボトルが到着し、二人のグラスに乳白色の酒が注がれた。夢岡はそれを一気飲みして話を続けた。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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