ライジング! 第83回
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ライジング! 第83回

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「みんな! ここが正念場だ! まさか初日にこんな山場を迎えるとは思わなかったが、〝マンガホープ〟の未来は我々にかかっている! 全力で事に当たってくれ!」

編集長からの笑顔の激励に編集部員たちはそれぞれ「はい!」と返事をした。

「いい返事だ!」

週刊誌の編集作業は激務だ。普段からその環境で鍛えられているので、編集部員には心身ともにタフな人間が多い。たとえ心折れそうな場面になっても、トップが元気な態度を見せれば士気が高まることを小柴は分かっていた。その逆もまた然り。辛そうな顔をしているとみんなの士気も落ちてしまう。苦しい時にこそ笑顔を見せるのが管理職の務め。小柴はそう思っていた。

「コシさん、外の空気でも吸って来たらどうですか?」

小柴が無理をしていることに、野島だけが気づいていた。周りの目があっては、小柴は落ち込むことすらままならない。なのでせめて一人になる時間を作ってあげたいと野島は思ったのだ。

「そうだな……ついでになんか買い出しでもするか。打ち上げも中途半端になったし、みんな腹減ってるだろう」

そう言うと小柴は、みんなから食べたいもののアンケートを取り出した。「遠くまで行くの嫌だからコンビニで買えるもの限定な!」等と言っている。気分転換ですらタダでは行かない。野島はそんな小柴の根性に脱帽した。

「じゃ、行って来るぞ」

小柴はそう言うと買うものリストが書かれた紙をヒラヒラさせて廊下に出た。

「ふぅーーー……」

思わず大きなため息が出た。自分でも気づかぬうちに大きなストレスを感じていたのだろう。野島はいいタイミングで外へ行くよう促してくれたようだ。
裏受付から外に出ると、空気はひんやりと冷たかった。四月とはいえまだまだ寒い。
コンビニまで歩く道中にふとビルを見あげた。電気がついているのはもう、五階のフロアだけになっていた。今まさにあの場所で、部下たちが頑張っている。そう思うと、頼もしさを感じるとともに、とんでもない重圧も押し寄せてきた。
〝マンガホープ〟の動作不良の件では、きっと上からお叱りを受けるだろう。自分の評価はどうでもいいが、彼らの評価を落とすわけにはいかない。最終的には自分が盾となり、編集部員たちの生活を守らなければいけないのだ。
小柴は大きくひとつ深呼吸をした。
するとその時、ズボンのポケットに入れていたスマホがブルルと震えた。問題解決してくれそうな開発が見つかった、という菅からの連絡だろうか。小柴が慌ててスマホを取り出すと液晶を見た。その瞬間、小柴の頬がふっと緩んだ。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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