ライジング! 第39回
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ライジング! 第39回

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「ついにオレも新連載を立ち上げることになってさ」

「本当か!? やったじゃないか!」

「新人作家でさ。絵は上手いんだけど話がちょっとアレで、オレがさんざん手を入れてようやく連載会議に通ったんだよ。この分だと連載始まってからも、オレが話考えなくちゃいけなくなりそうで本当参ったよ」

参ったという言葉とは裏腹に、夢岡は満面の笑みだった。結局、今日自分を飲みに誘ったのは、この話を聞かせたいがためだったのだろうと松田は思った。新連載漫画を立ち上げるのは並大抵の努力ではないだろう。それを成し遂げたという事実を、夢岡はとにかく一人でも多くの人に聞いて欲しかったのだ。

「ドリーすごいじゃないか」

「いやいや。連載立ち上げは別にすごくないって。あくまでも通過点だ。こっから人気作になって初めてすごいって言えるかもな」

喋りながら夢岡はマッコリをクイクイ飲み続けた。ボトルに残った酒はもう三分の一ほどになっている。マッコリは圧倒的に飲みやすい分、ちゃんとペースを考えなければいけない。

「飲み過ぎじゃないか」

最初はそうやって注意していた松田だったが、程なく夢岡に釣られてペースが上がっていた。視界はボヤけ、妙な浮遊感も出て来て気持ちがいい。

「あ~、あとこの前オレ春山先生に会ったぜ。編集部にいらっしゃったときに挨拶させてもらったんだ。ファンですって言ったら笑いながら握手してくれたよ」

夢岡の自慢話はまだ続いていた。何となく対抗心が湧いた松田は、フッと笑って夢岡に言った。

「オレもこの前、作家さんに会ってサインもらったけどな」

「へ~。誰だよ」

「天神旭也先生」

「ええっ! 超大御所じゃねーか! 漫画編集部でもないお前が、何で天神先生に会えたんだよ!」

「へへっ。それは言えないなあ。ちょっと今、大きなプロジェクトに関わっててさ。それ関連でお会いできたんだよ」

「なんだよ。もったいぶってないで言えよ~。俺たち親友だろ!?」

「いや、いくら相手がドリーでも言えないな。いや……ドリーだからこそ言えないって言い方もできるかな」

「いつからそんなもったいぶった喋りをするようになったんだよ。お父さんは悲しいぞ」

「お前の子になった覚えはないよ。……でもそうだな、アプリ関連かな」

「ってことは〝漫to漫〟のリニューアル復活か?」

「違うって。じゃあここだけの話だぞ。実はな――」

夢岡の自慢話にも飽きていた松田は、酔いの心地よさも手伝って〝マンガホープ〟の事をほんの少しだけ明かした。
好きな子を親友だけに耳打ちするような、ちょっとした秘密の共有。学生時代は、そんな些細なことが特別だったし、楽しかった。松田は夢岡と語り合いながら、楽しかった学生時代を思い出していた。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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