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ライジング! 第103回

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上條小春は焦っていた。自身が編集長を務める週刊ヤングウェーブを中心にした青年誌漫画アプリ〝まんがウェーブ〟の開発が遅れ始めたからだ。
Eセサミの氷上を使った裏工作で、照鋭社の青年誌漫画アプリ〝マンガホープ〟を終わらせ、失意の青年漫画ファンを一気に獲得する。そんな計画を立てていたのだが、いつの間にか〝マンガホープ〟が息を吹き返し始め、それに呼応するように、オンスケジュールだったはずの〝まんがウェーブ〟の開発が遅れ始めたのだ。

「だから、プログラマーがいなくなったってどういうことなの!」

小春は部下の夢岡を叱責していた。彼とは不倫関係で、周囲にバレたくないという思いからか、編集部内では強めに当たってしまうきらいがあった。

「ですから、開発を担当していたフリーのプログラマーが急用ができたとかで、連絡がつかなくなったんです。しかも、同時に何人も」

「代わりを探せばいいでしょ!」

「いろいろ当たりました。でも目ぼしいプログラマーは、ほぼ全員忙しいから無理だって言われちゃって……」

困り顔の夢岡に近づき、小春は声を潜めた。

「もしかして、照鋭社のあんたの友だちが邪魔してるとか?」

「……いえ、ちがうと思います。反撃にしては動きが早すぎるし、そもそもあいつはそういうことは苦手なはずです」

「じゃあ何が原因だっていうのよ」

イライラしたように机を指でトントン叩きながら小春が呟いた。
実のところ、名うてのプログラマーが一斉に消えた原因は小春自身にあった。
氷上を使っての裏工作で〝マンガホープ〟をローンチ日から瀕死の状態にさせたのは小春だ。しかしそうすることで、ジャバウォックと呼ばれた伝説のプログラマーである河原崎が〝マンガホープ〟立て直しに着手することになった。河原崎が表舞台に出てくるのは十数年ぶりで、そのニュースは大殿を経由してまたたく間にトッププログラマーたちに広まった。姿なき伝説の怪物、ジャバウォック。その名を異名に持つ男の手腕を近くで見たい。

「ギャラはいらないから、一緒に作業をさせてくれ!」

トッププログラマーたちはそう言い、こぞって〝マンガホープ〟立て直し作業に参加していった。結果として、〝まんがウェーブ〟の作業をするプログラマーたちが消えたのだ。

「氷上さんのところなら人手があるそうなんですが……」

「なによ。いるんじゃないの。迷ってないで頼みなさいよ」

「それが、相場の五倍っていう法外なギャラを要求していて……」

「あいつ! ロクな人間じゃないわね!」

だからこそ裏工作に協力してくれたのだが、そんな事も忘れて小春は奥歯を噛み締めていた。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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