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ライジング! 第16回

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松田が小柴に説明した通り、アプリ作成のための要件定義や詳細設計を詰める定例打ち合わせは、その後もずっと続いた。前に進んではいるものの、景色はなかなか変わらない。そんな毎日だった。
とはいえ松田は、充実した気持ちで日々を過ごしていた。長らく暇だった松田にとっては、忙しさは懐かしさと新鮮みを感じるものだったからだ。
面白いもので、〝マンガホープ〟の仕事をこなしていると、デジタル開発部で任される仕事も増えてくる。それまでは窓際に追いやられていたのに、やたらと仕事を振られるようになるのだ。
そんなある日、定例打合せの日でもないのに小柴から呼び出しがあった。珍しいなと思って五階へ行くと、難しい表情をした小柴と野島がいた。

「お疲れ様です。どうしたんですか?」

松田が聞くと、小柴と軽く目を見合わせた野島が言った。

「タイヨー、お前に山を動かしてほしいんだ」

「山……ですか」

思わず聞き返した松田に、小柴が言い足した。

「物理的な意味じゃなくて、比喩だぞ」

「それは分かりますけど……」

困惑の解けない松田に、野島は一冊の漫画を差し出した。受け取った松田は表紙を見て声をあげた。

「あ! 『ブレイブチェーン』じゃないですか。僕これ大好きなんですよね!」

『ブレイブチェーン』は、箱根駅伝をテーマにしたスポーツ漫画だ。
主人公の北沢走破(きたざわ そうは)が駅伝の名門大学に入り、ひょんなことから長距離走の才能を見出され、箱根駅伝を走るまでが描かれている。
週刊少年ホープで五年間連載された人気作で、アニメ化や映画化もされている。当時は中高生の間で駅伝ブームを巻き起こし、社会現象にもなっていた。そして人気絶頂のまま連載を終えたため、三十年以上経った今でも続編を望む声が止まない名作だ。

「これ大好きなんですよ! 主人公サイドも良いけど、堂明大(どうみょうだい)の〝トラバサミの龍二(りゅうじ)〟と朱雀大の〝スパートモンスター 清水亮(しみず りょう)〟も大好きでした。三区のラストでこの二人がデッドヒートするシーンとか大興奮でしたよ! 残り五キロで、掟破りのロングスパートをかけた清水に、必死に喰らい付いた龍二。その龍二を振り切るために、残り二キロで第二のスパートをかける清水! そこは何度も読み直しました!」

熱っぽく語る松田に、野島は少し驚いた様子だった。

「だいぶ前の作品なのによく知ってるなタイヨー。お前が生まれる前だぞ」

「親がコミックスを全巻持ってたんで、小さい頃から読んでたんですよ」

松田は手元の『ブレイブチェーン』一巻をパラパラとめくって目を細めた。

「あぁ……こうして見てると、また全巻読み直してみたくなっちゃった。作者の天神旭也(てんじん あきなり)先生って天才ですよね。一度お会いしたいなぁ……」

「会ってこいタイヨー」

「……はひぃ?」

不意打ちのような小柴の一言に、松田は思わずマヌケな声を出してしまった。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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