ライジング! 第72回
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ライジング! 第72回

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Eセサミの開発部屋では、郡家は納得がいかないといった様子で作業していた。数時間前に氷上が急に「バグ修正作業は終わったか?」と言ってきたのだ。そんなことを聞いていない郡家が知らないと言うと、氷上は突然大声で郡家を罵倒し始めた。

「何だと! 知らないだと!? 冗談を言うんじゃない!」

他の社員もいる前で大声で怒鳴られるのはかなりの屈辱だ。

「バグ修正の話なんか聞いてません!」

そう主張する郡家に、氷上はすぐさま言い返してきた。

「ちゃんと言っただろ! 自分のミスをごまかそうとするな!」

「でも僕は管理ツール周りの作業があるんですよ。それに加えてバグ修正なんて、手が回りません」

「だったらすぐヘルプを頼むべきだろうが!」

「だからそもそもバグ修正の話を聞いてな――」

「もういい! オレは今から打ち合わせだ。照鋭社にはオレが頭を下げておくから、バグ修正作業の目処をつけておけ。すぐにだぞ!」

それだけ言って氷上は出かけて行った。残された郡家は、仕方なくバグ修正の作業を始めていたのだ。
郡家は自分が完全に氷上に目をつけられていることを感じていた。他の社員もそれには気付いており、郡家を助けるのに二の足を踏んでいるようだ。郡家をかばうことで、氷上の次のターゲットにされる可能性があるからだ。
郡家が粛々と作業をしていると、氷上が帰って来た。

「みんな集まってくれ」

部屋にいる〝マンガホープ〟開発のプロジェクトメンバーが呼ばれた。全員が机の周りに集まるのを待って、氷上が口を開く。

「さっき照鋭社で〝マンガホープ〟について打ち合わせをしてきた。まあ一口で言うと、リリースは延期になった。残念だ」

郡家は氷上を見て「本当に残念に思っているのか?」と疑問を感じた。それどころか、妙にほっとした表情をしているようにも見える。

「どこぞのグズがバグ修正作業を怠ってたからこうなったんだが、仲間のミスはみんなでリカバーすべきだ。そいつはもうプロジェクトメンバーからは外す。だからみんな、悪いがバグ修正の作業に当たってくれ。いいか?」

周囲から「はい」という小さな声がいくつも聞こえてきた。ミスも何も、自分は何も聞いていないのに……。そう思った郡家だったが、氷上には何を言っても無駄だということは分かっていたので、もはや反論する気も起きなかった。しかも自分は、プロジェクトメンバーから外されるらしい。誰よりも頑張ってやって来たのに、完成の瞬間に立ち会えないのは身を切るような辛さだ。

「よし、じゃあ作業を割り振るから、郡家以外のメンバーは残ってくれ」

氷上はわざわざ名指しで郡家を作業メンバーから外した。誰のミスかをはっきり周囲に知らしめているのだ。しかし反論の機会はもう逸してしまっている。郡家はただ黙って屈辱に耐えるしかなかった。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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