ライジング! 第82回
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ライジング! 第82回

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郡家は後ろめたい気分のままビールジョッキを見おろしていた。
〝マンガホープ〟がローンチされ、Eセサミのプロジェクトチーム全員で打ち上げの飲み会が行われているのだ。郡家はチームを外されていたが、「おこぼれで呼んでやる」と氷上に言われて半ば強制的に参加させられていた。

「はあ……」

郡家はため息をついた。〝マンガホープ〟の状況が気がかりで、どうしてもビールに口をつける気にならないのだ。そんな郡家とは対照的に、周りでは開発に携わったスタッフが飲んで騒いでいる。その中心にいるのは氷上だ。
郡家は、ついさっき氷上とした会話を思い出していた。

「氷上さん、開発したアプリのローンチ日にプログラマー全員がパソコンを離れて飲んでいていいんですか?」

「あ? いいんだよ。お前は本当に細かいことばかり気にするヤツだな」

「でも、今ネットを見たらアプリが動いてないって報告が幾つも見つかりますよ。これってEセサミで対応すべきなんじゃ……」

「いいか? オレたちはナノ&ナノに依頼されてアプリを完成させた。そしてそのアプリをちゃんと納品したんだ。それにOKを出して配信を始めたのは向こうさんだ。つまり依頼は達成されたってことなんだよ。そのあとはアプリがどうなろうが知ったこっちゃない」

「でも――」

「でももヘチマもねえ! もうお前どっか行け。せっかく呼んでやったのに。酒がマズくなる」

そう言うと氷上は郡家に背中を向けてしまった。
酒がマズくなる。それはこっちのセリフだ。いや、マズくなるというより、そもそもうまい酒ではない。郡家はそっと中座し、一人でEセサミへと戻って行った。

照鋭社のヤングホープ編集部は、電話対応に追われていた。〝マンガホープ〟が全く動かないことへのクレーム電話が殺到していたのだ。ネットへの書き込みで誰かが編集部の電話番号を載せ、それをきっかけに突撃だといわんばかりにユーザーが電話をし始めたのだ。中には悪質なイタズラ電話もあり、編集部は対応に四苦八苦していた。
そんな中、小柴は菅と電話をしていた。

「ガースー、どうだった? ナノ&ナノの開発チームで対応できそう?」

『それが、必死に頼んだんですが難しそうです……』

「そうか……」

『弊社のラインはどこも手いっぱいで……。一か月後なら手が空くけどってことらしいんですが、まさにいま助けが必要なのに何を悠長なことを言っているんだという感じで……』

菅も必死に頼んだのだが、何しろ急すぎるお願いだ。いくら食い下がっても手を貸してくれそうな気配はなく、最終的には上司に「Eセサミはお前が選んだ会社だろ! その開発が消えたなら、お前が何としろ!」と叱られてしまっていた。

「了解。他に伝手あったら当たってもらえる? こっちでも探すのから」

小柴が電話を切ると、野島がスッと寄って来た。

「ダメでしたか?」

「だね」

「自分も知り合いのプログラマーに片っ端から連絡してるんですが、繁忙期でどこも手一杯らしいです」

「そっか。……よっし!」

小柴は立ち上がると、問い合わせ電話が途切れたタイミングで編集部員に発破をかけた。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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