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ライジング! 第21回

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「懐かしい話してるじゃないか、ヤジマ」

「ノジマです。……カヌレは買えました?」

野島の言葉に、小柴は手に持っていた紙袋をひょいっと上げた。

「いやぁ、昔ばなしってガラでもないんですけど、タイヨーの食いっぷり見てたら思い出したんですよ」

「なるほどね。にしても懐かしいな。天神先生、よっぽど野島の食いっぷりが気に入ったのか、あのあとすぐに大食いの男が主役の読み切り描いたもんな。あれは明らかにキミがモデルだよな」

「えっ!」

松田は目を見開いた。

「『大食い仕置き人 エース』の大口エースって野島さんがモデルなんですか!?」

「そうだよ。野島の下の名前が〝英介〟だから、エースって名前はそっから取ったんだろうな」

「ええっ!」

『大食い仕置き人 エース』は、食べることが大好きな主人公の大口エースが、依頼者から持ち込まれた食べ物に関する恨みを晴らしていく、という勧善懲悪のハードボイルド作品だ。連載にはなっていないものの、読み切りで何度か描かれ、コミックスにもなっている。密かなファンが多いカルト的人気作だ。

「知らなかった……凄いじゃないですか野島さん!」

「別にオレが凄いわけじゃないって」

テンションの高い松田をそう言ってあしらうと、野島はグラスの水を一口飲んだ。いつものクールな野島だ。
そしてまたいつものように、話題を自然と仕事に戻した。

「でも、天神先生は食いっぷりの良い人間を好むから、タイヨーが頼めば電子化OKの返事が貰えるかもしれないな」

「確かに! 期待してるぞタイヨー」

小柴も続けて松田を乗せる。
二人の言葉を聞いた松田は自分の任務を思い出し、襟元をただした。天神作品がラインナップされれば、〝マンガホープ〟の大きな柱になるだろう。漫画ファンの注目度もかなり変わって来る筈だ。いくら使いやすいアプリであっても、漫画アプリの主役はあくまでも漫画なのだ。
打ち合わせを通じて、松田は〝マンガホープ〟に強い思い入れを持つようになっていた。その〝マンガホープ〟で、大好きな天神作品が読めるようにしたい!

「コシさん、野島さん。僕頑張ります!」

「その意気だタイヨー。良い手土産も手に入ったし、これはきっとうまくいくぞ」

「はい! 必ず天神先生から電子化の許可を貰って見せます!」

気合いの入った松田は、すっかり冷めた残りの焼鳥丼を口いっぱいに詰めこむのだった。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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