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ライジング! 第90回

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それにしてもクレーム電話は鳴り止まない。対応している編集部員たちがどんどん疲弊していくのが目に見えてわかる。ネット上の評判も相変わらず悪く、起動画面から全く動かない〝マンガホープ〟は「壁紙アプリ」と揶揄され始めていた。
頼りの大殿はいつ作業を開始してくれるだろうか。
松田がそんなことを思っていると、また目の前の電話が鳴った。しかしこれは外線ではない。裏受付からの内線電話だ。松田が出ると、裏受付のおじさんが困惑したような声を出した。

「松田さんにお客さんなんですが、面識はないと仰っていて……。お通ししていいですか?」

「あの、お名前は何でしょうか?」

「河原崎(かわらざき)さんとおっしゃる方です。大殿さんからのご紹介だとか」

「ああ、大殿さんの! ちょっと待ってください、お迎えにあがります」

松田は急いで一階の裏受付へ向かった。ようやくこれで事態の解決へ乗り出せるのだ。大殿の紹介ならば、まちがいない人だろう。
エレベーターを降り、静まり返った廊下を走って裏受付へ行くと、ぬぼーっと立っている男の姿が見えた。彼が河原崎だろう。しかし松田は、河原崎に近づくにつれて顔が曇って行った。あまりにも風体が怪しすぎるのだ。
髪は伸ばし放題で顔は無精ひげまみれ。そんなひげ越しに見える顔色は不健康そうで、なおかつちょっとお酒臭い。しかもまだ肌寒い季節なのに、半パンにサンダル姿だった。

「大殿さんのお知り合いの方ですか?」

恐る恐る尋ねた松田に、ひげもじゃ男は頷く。

「うん。そう。この辺で飲んでたんだよ。家に帰るより現場に来た方が早いと思ってね。パソコンあるでしょ?」

目も合わさずに平坦に喋る河原崎は、どこか浮世離れしていて怖かった。裏受付のおじさんを見ると「警備員呼びますか!?」的な表情で松田を見ていた。本音を言うとお引き取り願いたかった松田だったが、やっと見つかったプログラマーだ。この際贅沢は言っていられない。
裏受付のおじさんに「大丈夫です」の微笑みを向けると、松田は河原崎を社内へと案内した。
編集部に着くと、松田は空いたパソコンに河原崎を案内した。

「これ使ってください」

すると近くに小柴が寄って来て、松田に耳打ちした。

「大丈夫なの?」

「……分かりません」

小声で答えた松田だったが、心の中では不安でいっぱいだった。小柴も心配顔だ。そして野島は、どこかにらみつけるように河原崎を見ていた。

「野島さん、顔怖いですよ」

松田が小声で注意すると、野島はカッと目を見開いて叫んだ。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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