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ライジング! 第109回

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夕方から飲み始めた松田たちは、最終的に三軒をハシゴしてから小柴の行きつけである〝若林〟に来ていた。

「あら小柴さんお久しぶり。お友だち連れてくるなんて珍しい」

お母さんの言葉に、珍しく泥酔した小柴がややろれつの回らない口調で反論する。

「嫌だなあお母さん。友だちじゃないれすよお。こいつらとはたとえ同じクラスになっても、修学旅行の班も、選択教科も、体育の時間で二手に分かれてやるサッカーのチームも、好きになる子も絶対別々れすよお」

「最後のは別でいいじゃないですか」

「そうっすよコシさん。好きな子が被らないのは良いことだし」

野島と松田の言葉に、小柴は「そうかあ?」と納得して満足そうに笑っておしぼりを枕に机に顔を伏せた。

「珍しくずいぶん酔ってらっしゃるのね。……きょうはもう遅いし、ここからは貸し切りにしちゃうわ」

営業時間はまだ一時間以上あったが、お母さんは表に出て看板の明かりを消してしまった。

「どうもすいません。ご迷惑じゃなかったですか?」

野島が謝るとお母さんは柔和な笑みを浮かべた。

「いいのいいの。この年になると、世話の焼ける子がかわいくなってくるものなのよ」

「この年って、おいくつですか?」

松田が無邪気に質問すると、お母さんは笑みをスッと消した。

「……聞こえなかったわ。何ておっしゃったの?」

「何でもないです! トイレ、トイレに行きたいのかタイヨー! よし、行こう!」

「イテテテ、野島さん、痛いです……」

松田の頭をガッチリとヘッドロックした野島は、痛がる彼の声を無視してトイレに行った。ふと静かになった店内で、机に突っ伏していた小柴が顔を上げる。

「変なヤツらでしょお?」

「そうですね。類は友を呼ぶのかしら」

お母さんが相槌をうつと、店の奥からも声が聞こえてきた。

「楽しい仲間だね、コッシー」

「あれえ? ダイちゃんいたの!?」

「ずっといたよ」

声の主は、この店での常連仲間の老人、ダイちゃんだった。店の奥の定位置でひっそりと飲んでいることが多いので、声を出すまで気付かないのはもはやデフォルトだ。

「ごめんね、なんか騒がしくしちゃって」

「いいのいいの。コッシーがそれだけ酔うってことは、なにかあったんでしょ」

「そう、仕事で結構なピンチが訪れちゃってね。どうしようもないから、もう飲んじゃえ……って」

「はっはっは! そりゃあいいね」

二人が仲よく喋っていると、松田と野島が戻って来た。松田は水で顔を洗ったらしく、シャツの襟付近が豪快に濡れていた。

「コシさん誰と喋って…………人がいる!」

店の奥のダイちゃんに気づいた松田が目を見開いた。野島もいま気づいたと言った様子で「いつの間に」と呟いている。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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