ライジング! 第9回
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ライジング! 第9回

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野島が連れて来てくれたのは、人気のカレー屋〝HOT BURN(ホットバーン)〟だった。

照鋭社のある神保町は、カレー屋の宝庫だ。チェーン店だけでなく、昔からやっている老舗の名店が多く、日本一のカレー激戦区の呼び声も高い。
チキンカレーを注文してお冷を飲みながら松田は言った。

「野島さん……僕、役に立ちたいです」

「急にどうした」

「いや、なんか全然何もしてないなって思って」

「打ち合わせしてるじゃないか」

「その打ち合わせで何もしてないなって」

「そうか?」

首をかしげる野島に、松田が「そうですよ!」と詰め寄る。

「野島さん! 僕、役に立ちたいんです!」

「それさっき聞いた……」

野島は若干引き気味だ。

するとそこへチキンカレーが運ばれてきた。チーズが振りかけられたご飯を盛った皿と、魔法のランプのような形のグレイビーボートに入ったカレーのルゥ。さらに別皿で蒸した皮つきジャガイモも二つついている。注文したわけではなく、デフォルトでついて来るのだ。

「まぁ食え」

野島に言われて松田がご飯にルゥをかける。湯気と共にふわっと、スパイシーで甘みの感じる香りが立ち昇って来る。最高に食欲をそそる香りだ。米にかかっていたチーズは、ルゥと米の熱で優しくとけ出し、ルゥと一体となっていく。
松田はたまらずスプーンをつかみ、カレーを多めにすくって口に入れた。うまい。具材は全く見えなくなるまでトロトロに煮込まれており、見た目は至ってシンプル。しかし口に入れた時に感じる味の深みはすさまじい。

「うまいか?」

「うまいです!」

それ以外の感想が出ないぐらい完ぺきなカレーだ。半分ほど食べた所で、松田は別皿のジャガイモを手にとった。丁寧に皮をむいて口に放り込む。水分が抜けていない、ホクホクの蒸し具合がたまらない。カレーの中に入れて食べる派の人もいるが、松田は別で食べる派だった。

「このジャガイモがいい仕事してんだよなぁ」

野島の言葉に松田も頷く。野島はツーっときれいに皮をむいている。

「別皿で出てくるし、一見別物に思えるんだけど、やっぱりカレーを構成する一部なんだよこのジャガイモは」

「僕もそう思います……あっ!」

そこで松田は、はたと気が付いた。野島はこのジャガイモの存在を、松田に例えようとしてくれているのではないだろうかと。
実はいい仕事をしているジャガイモ。最初は別物だと思われていても、実は大事な存在。なくてはならない存在であるジャガイモ。お前もそんなジャガイモのような存在になればいいんだよ。きっとそう言ってくれているのだ。

実は野島は特にそんなことは考えていなかった。ただジャガイモの存在を褒めただけである。しかし松田はそれを知らない。

「ありがとうございます、野島さん! 僕がんばります!」

「お、おう」

急にやる気がみなぎる松田を見て野島は、お腹がいっぱいになると元気になるヤツなのかな……と考えていた。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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