ライジング! 第3回
見出し画像

ライジング! 第3回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ

会議室には小柴のほかにもう一人誰かがいた。顔は見たことはあるが、名前は知らない。誰だろうか……。そんな疑問が顔に出てしまったのか、小柴が自ら紹介をしてくれた。

「私がヤングホープ編集長の小柴で、こっちが副編のヤジマ」

「ノジマです」

何度も繰り返されたやりとりなのだろうか。野島はきわめて平板にツッコんだ。

松田が少し呆気に取られながら「デジタル開発部の松田太陽です」と自己紹介すると、小柴が「座って」とイスを勧めてきた。

「あ、はい」

ストンとイスに座った松田に、小柴はさっそく本題を切り出した。

「いきなりで悪いけど、照鋭社青年漫画誌初の漫画アプリ〝マンガホープ〟の立ち上げプロジェクトメンバーに、キミを選んだからよろしく」

「えっ!?」

急な話すぎて脳の処理が追い付かない松田に、野島が補足説明を入れる。

「企画は立ち上がったばっかりで、まだここから詰めて行くんだけど、とりあえず我々三人が〝マンガホープ〟プロジェクトの初期メンバーってことになります」

野島の言葉を小柴が引き取る。

「〝マンガホープ〟プロジェクトが始まるといっても、キミの所属はデジタル開発部のまま。私と野島もヤングホープ編集部所属だけど、〝マンガホープ〟の立ち上げ業務も同時にやっていく感じ。ちょっと忙しくなるかもね」

一気に説明されて軽いパニック状態になっていた松田は、数ある疑問の中から一番大きなものを小柴に投げかけた。

「どうして僕なんかが?」

それは一番気になる所だった。デジタル開発部では一切仕事を任されない自分が、どうして急に大きな仕事を振られるのか。

松田の質問に、小柴はあっさりと答えた。

「私が適任だと思ったからだよ」

しかし松田は納得できなかった。いま社内で一番信頼されていないと言ってもいい自分が、新しいプロジェクトの立ち上げメンバーに選ばれるはずはないのだ。

……と、ここで松田は自分なりの結論が出てしまった。

(デジタル開発部で一番ヒマな人間だからだ)

アプリ立ち上げプロジェクトとなると、ある程度デジタルに明るい人間がいた方がいい。照鋭社ではデジタル開発部にいる人間がそれにあたる。
きっと小柴は、デジタル開発部の部長に、適任者はいないか聞いたのだろう。そこで部長は一番手すきで、いなくなっても仕事に影響しない自分を推薦したのだ。それ以外は考えられない。

松田はうつむいてギリッと奥歯をかみしめた。悔しい。これほどまでに自分はデジタル開発部内で軽んじられているのか。
松田は、ここ半年ため込んでいた不満や鬱憤が、体の奥底からエネルギーとなって燃え上って来るのを感じていた。自分をバカにしたヤツらを見返したい!

「あとは本人にやる気があるかどうかなんだけど」

小柴の問いかけに松田は食い気味に答えた。

「やります! やらせてください!」

半年ぶりに、やる気のスイッチが入った瞬間だった。

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ

この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
集英社青年漫画誌『週刊ヤングジャンプ』の公式アカウントです。連載作品の各種最新情報はもちろん、様々な企画や記事も掲載していきます! 公式サイトはこちら:https://youngjump.jp/