今、あえての「漫画持ち込み」してみませんか?【シンマンnote#1】
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今、あえての「漫画持ち込み」してみませんか?【シンマンnote#1】

 はじめまして。副編集長のナカムラと申します。
 
 入社以来、ヤングジャンプ 一筋。
 
 現在はヤンジャン!アプリをはじめとしてデジタル関係の施策を推進する新部署「ヤンジャン!エクス編集部」として働いています。紙の雑誌とWEB、そしてアプリ、そして動画。あらゆる面を同時展開するヤングジャンプ に横断的に関わり、新しい作品と才能をより多くの読者のみなさまに届ける業務に邁進しています。もちろん、作品担当もしています。

 さて私のことはさておき、本シリーズでは「漫画家」になりたい新人作家の皆さんに向けて、ヤングジャンプへの持ち込みから賞への挑戦、そして連載までの流れをお話していきたいと思います。

●今、あえて「漫画持ち込み」をオススメする理由

 かつては漫画家になる方法といえば、投稿か持ち込み、概ねその2つの手段しかありませんでした。ですが今は時代は様変わり。投稿サイトはもちろん、SNSでのバズをきっかけに一夜にして複数の版元からオファーが飛んでくる、そんなことも珍しいことではなくなりました。

 何もわざわざ出版社に行き、知らない編集者に作品を見せる、そんなことをしなくても漫画家にはなれる、それは事実です。

 一方で、歴史的に数多くの有名作家さんがデビューのきっかけとなった「持ち込み」のメリット、意外と知られていないのももったいなあとそんな思いで、あえてシリーズ第1弾にしてみました。

●その1 オンラインでも「持ち込み」ができる

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 こんなご時世なのであえて1番目に持ってきました。密室対面で唾を飛ばしあって打ち合わせをする、そんな風景も今は昔。ヤングジャンプ ではオンラインでの持ち込みに対応しております。
https://shinman.youngjump.jp/apply2/
 専用ページからデータを送り、打ち合わせ日程を決めたらいまどきのリモート打ち合わせツールで家にいながら持ち込みできます。いつの日か、作家さんの顔を直接見てお話できることを願いつつ、今はこうした形でもアクセスができます。もちろん、遠隔地の方や直接会うのは気が引ける、という方のためにこの仕組みは今後も維持していく予定です。

●その2 持ち込み作品は必ず全部読みます

 我々としては仕事ですからこんなことは当たり前ですし、ドヤ顔でいうことではないですが、SNSや投稿サイトでは必ずしも作品の全てが読んでもらえるとは限りません。最初の4Pで伝わらなかったらSNSでその先まで見てもらうのは難しいと思います。もちろんプロになって媒体に乗ったとしてもそれはずっと続く戦いではあるのですが。
 
 ですが、作品というものは様々ですよね。もうちょっと読んでもらえれば面白くなるのに!キャラのいいところなのに!そんな気持ちになることってないでしょうか?特にネットではタイトルやサムネだけで万人単位で読者の数が変わってしまう世界です。全部読めば面白い漫画はもっとたくさんあるはず、と私は思います。
 
 特に新人作家さんは描けば描くほどうまくなるもの。前半よりも後半のほうが良い画になっている、そんな原稿もたくさんあるはず。持ち込みでは最初から最後まできっちり読んだ上で、その作品の良いところや改善点を一緒に考えていきます。

 漫画家さんが最初にぶつかる壁である「作品を読んでもらうこと」。これを当たり前のようにクリアできるのが意外と語られない持ち込みのメリットです。もちろん、事前審査などありません。コンタクトしてくださった全ての方の作品を読んでお話します。

●その3 読んでいる姿も重要な情報になる

 これはオンラインでは難しい部分ではありますので、世の中が平常化することを願って書きます。編集者なんていうと偉そうな感じがしますが、まず何より大事なことは「我々は最初の読者である」ということです。自分の漫画を初見の人間がどんな風に読むのか、これ自体に多くの情報があります

 ページを戻って読み直していたらその部分は伝わりにくかったのかなとか。ページを繰るテンポが良い時は作品に没入してくれているのかなとか。答え合わせは読了後にはなりますが、読者が実際に読むスピードや読み方を目の前で見ることができるのはプロ作家さんにとっても貴重で、そして重要な時間であるとも聞きます。(最近はデジタル原稿が増えたのでなかなか機能はしてないのですが)

 仕事だから「読むのは当たり前」と前段で申しましたが、我々も一漫画ファンですので基本的に読むのは楽しみにしていますし、また普通に楽しんでもいます。ギャグで笑ってしまったりクライマックスで涙ぐんでしまったり。続きが気になって唸ってしまったり。そんなこともよくあります。

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↑ヤングジャンプにはスタバでパソコンいじってそうなタイプはあまりいません。(ヤングジャンプ本誌連載「漫大河」より。イラスト/江久井)

 読み切り作品は1本読むのにそう時間はかかりません。何日も何ヶ月もかけて完成させた原稿も10分程度の時間で読み終わってしまう。そのわずかな時間の楽しみのために、一人の人間の人生をかけた膨大なエネルギーが投じられているその儚さこそが、漫画というメディアが時代を超えて、また媒体がデジタルになっても多くの人の心を惹きつけて離さない由縁なのかもしれません。緊張した面持ちで、時には徹夜明けの疲れた顔で、我々が完成原稿を拝読している時の作家さんの姿を見るとそんなことを思ったりします。

 編集者によって「読み方」も様々ですが、私個人は「初読」はあえてちょっとした空き時間に読むような感覚で半分流すような読み方をします。(見た目感じがわるいので先にお伝えしますが)多くの読者が最初はそのように読むからです。この読み方で「伝わりにくい」「引っかかる箇所」を覚えておいて、返す刀で二度目は丁寧に精読します。初見の一般読者に近い印象はいうのは、やりなおすことができない貴重な情報ですのでそんな部分もお伝えできるようにしています。

●その4 話しをすることで整理できることがある

 せっかくお話する形を取るので、やはり対話を大切にしています。どんな漫画や映画が好きなのだろうとか、どんな作品を描きたいのだろうとか。このシーンはどんな意図で書かれたのだろうとか。

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↑対話のきっかけとしてこういうシートを書いてもらう編集もいます。他誌他社作品ももちろんOKです。本当に好きな作品や思いを書いてください!(ヤングジャンプ本誌連載「漫大河」より。イラスト/江久井)

 新人作家さんの場合は原稿だけでは120%伝えられてはいないケースも多いと思います。そんなところは質問をしたりなどして理解を深めていきます。読んだだけではわからなかったが狙いを聞いたら見え方が変わり、急に作品に可能性を見出したりする、なんてこともあります。「持ち込み」という場が多くの才能を見出す機能を果たしてきた理由、それはやはりこうした対話にあると考えています。「作品だけで評価する」ならばそのまま掲載してアンケートなりPVなりで機械的に評価すればいい、ですが持ち込みの場では我々は「作品の今」ではなく「未来」を見ようとします

 また、他人に自分の作品について話すことで整理されることというのもあります。最初はなかなか照れ臭いものです。ですが、言語化して相手に伝えようとする時は脳味噌の別の部分が活性化するもの。
 
 プロ作家さんでも打ち合わせの場はこの「話すこと」を大事にしてる方が結構いました。ある作家さんなどは話しながら段々盛り上がっていってどんどんアイデアがでてきて、矛盾に気づいて、悩んで、勝手に解決してしまう、担当は毎度、ほぼ聞いてるだけなんですが(笑)、それでも毎週必ず会ってその時間を作ることをとても大切にされていました。これは極端な例ではありますが、そのくらい言語化して目の前の人間に伝える、というのはそれだけで状況を変える力があるのです。

 また、人から言われることで気づくこともあります。何気なく描いたキャラの表情が想定していなかった解釈をされた時、自分でもわかってなかったキャラの一面に気がついたりとか。そこから話していくうちに意外なアイデアが浮かんだり、そうやって盛り上がってるうちに次のネタができるなんてこともあるかもしれません。

●その5 多様な作品を受け止めます

 全ての版元がそうではないと思います。明確に「今はこういう作品が欲しい」というのを示してくるところもあると思います。あるいは編集者にも得意なジャンル、好きなジャンル、挑戦してみたいジャンルというものがあり、会う人によって真逆のことを言われることも珍しい話ではありません。

     もちろん、ヤングジャンプ の雑誌の読者層というのは明確にいますので、その人たちに届くようにというのを基本として打ち合わせをします。人気や売り上げなど経験に基づいた基準や目標があればこそ、作品の内容に意見をいう根拠となるからです。それがなければただの好き嫌いでしかありませんので、普通に喧嘩になります(笑)

      友人でも身内でもネットの感想でもなく、「編集者」に見せる意味というのはまさしくそこで、目標を共有して課題をクリアする方法を一緒に考えること。ですから、大切な思いは一つだけ。「一人でも多くの読者に読んでもらいたい」という気持ちです。

 それさえ共有していただけるなら、ヤングジャンプ はオールジャンル・ノーボーダー。誌面を見ればわかる通り、非常にバラエティ豊かな連載作品を掲載しています。雑誌の読者向きでなければWEBやアプリで。その作品に可能性があると思う限り、ジャンルや題材だけで否定することはありません。

 先にも書いた通り、ネットで「バズる」ためにはある程度、流行りの構文だったり題材だったり、あるいはタイトルの付け方、いきなり本題に入るテンポ感など、自由なようでいて不自由が大きい世界です。もちろんそうした作り方が得意な方はそれを武器にすべきですし、我々も大歓迎でもありますが、一方で、妙に窮屈になっていくデジタルの世界の中では、なかなか広げることが難しいセンス、題材などに対しても我々は可能な限り、引き出そうと向き合います。

 その全てを絶対うまくいかせる、とお約束できるわけではありません。いわずもがなですがうまく行かないことの方が多いのが漫画家という狭き門でもあります。ですが子供よりも趣味嗜好が多様な大人の読者に届ける「青年誌」として、描き手の作品に込められた熱と広げたいという意志が有る限り、その方法を考えていきたいと思っています。

●その6 オンラインでは言えない話が聞けることも

 近年は漫画編集者も個人で発信することも増えてきました。しかしながらネットで言える情報というものにはそれなりに制約があり、なんでもかんでも言えるわけではありません。もちろん、初回持ち込みでいきなりというわけではないかもしれませんが、実際に作品と向き合い、またプロの作家の仕事を見てきた編集者だから伝えられる、現場の生きた情報を得られるのも持ち込みという場所のメリットだと思います。

●その7 打合は作品・作家さんにカスタムしたものに

 漫画技法や理論は汎用化して誰にでも応用できるものもありますが、やはり実際に描くのは一人一人の別の人格を持つ作家さんです。今、何作目の作品なのか、どんなところが課題なのか、どんな作品を目指すのか、またその人自身の性格などによって伝え方も違います。マラソンを始めたばかりの人をいきなり40km走らせたら倒れてしまいますよね、成長に応じた課題設定を一緒に考えます。

 もちろん、打ち合わせの場は真剣勝負。読んでみて直したほうが良いところや、方向性など思うところはすべて正直に伝えます。思っているのにその場を取り繕って言わずにお帰しするのは不誠実なこと。せっかく足を運んでいただいた分だけ、出来る限りたくさんの情報を持って帰っていただくべく、限られた時間の中でお伝えします。ですが、一方的な押し付けではなく、受け入れられるものになるよう、言葉を尽くして臨んでいます。

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↑のステータスを把握しつつ、改善点を提案。とはいえ、聞くのはしんどいもの…。(ヤングジャンプ本誌連載「漫大河」より。イラスト/江久井)

 ここに関しては初回でいきなりチューニングできる、というわけではなく、やはりそのあと継続的にやりとりしていく中でできていくものでもありますので、いきなり万全な対応とはいかないかもしれません。編集者も人間ですので相性もあります。不運にもどうしても合わなければ無理につきあわなくてはならない、ということもありません。最後はご縁。お互いにとって良い出会いとなることを常に願っています。

●その8 雰囲気からデビュー後のイメージが湧く

エントランス

 集英社ではエントランスにその時のヒットタイトルのパネルなどの掲示があります。また編集部にいくとメディア化した作品のポスターがずらりと張り出されています。

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 ヤングジャンプ のあるフロアの打ち合わせスペースは基本的に活況で、新人からプロ、社内の各部署まで様々な人が打ち合わせをしており、最近ではヘッドセットをつけた編集者が話しながらウロウロしていたり。またヤングジャンプ はグラビアも扱いますので、これから売り出していくアイドルさんやカメラマンさんなどがいることも。

 漫画に携わり、一つの雑誌、媒体を作るたくさんの人間。それによって生まれた作品が様々な人の手でアニメになり、ドラマになり、映画になり、世の中のトレンドを作る。その全てのエネルギーが満ちている空間です。服装も自由。派手な髪色の人もいれば、何日も帰ってないように見える(?)人まで。その空間では、漫画を見せて、漫画の話をすることを奇異な眼で見る人間は誰一人いません。漫画が絶対正義の世界です。

 このようなご時世ですのでお越しいただくことはしばらくは難しいかもしれませんが、こうした場の空気を感じることも職業としての漫画家を目指す上で貴重な体験になるのではないかと思います。

 読み返してみて思いましたが、実状というよりは志や努力目標も多分に入っているかもしれません。「こうありたいな」という気持ちといいますか。「ヤンジャン」に持ち込んだけど全然そんなことはなかったぞというお叱りもあるかもしれないです。でもその編集者は他の作家さんとは馬が合うのかもしれない、あるいは他の作家さんとは合わなかった編集者が自分とは合うのかもしれない。様々な作家さんに様々な編集者が必要で「一律ルール」ではないところが良い部分でもあると思ってます。

 先にも書きましたが、最後は人間と人間のお付き合い、ご縁だとも思います。ですが、常に私たちは新しい才能と新しい作品と出会えることを楽しみにしています。その出会いがいつかフロアの一角のでかいポスターやパネルとして並ぶ日がくることを願っています。

 しばらくはなかなか対面での対応は難しい状況もあるかもしれませんが、おちついた暁にはぜひ、お気軽に出版社に足を運んでいただければと思います。

 対面のお持ち込みの際には必ず電話で事前予約を。
 03-3230-6222
 お待ちしております!
  
 次回は「あの噂は本当なの?持ち込みの際の不安を無くすQ&A 」をお届けします!



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