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ライジング! 第117回

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「〝マンガホープ〟バージョンツーの完成を祝って、カンパーイ!」

小柴による乾杯の発声で、部屋中でグラスが重なる音が響いた。
バージョンワンのローンチ日、運命の日からは一年以上が過ぎていた。アプリ終了の危機を脱してからは、大殿にバージョンツーの開発を依頼し、ようやくこの日、完成にこぎつけたのだ。開発に際しては伝説のプログラマー、ジャバウォックこと河原崎にも手伝ってもらったそうだ。

「飲んでるかタイヨー」

野島がビール瓶を持ってやってきた。表情はいつもと変わらないが、松田は野島の感情の動きを、雰囲気で掴むことができるようになっていた。

「ご機嫌ですね、野島さん」

「そりゃこんな日だからな。しかしコシさんも変わってるよな。あのときと同じ店を打ち上げ会場にするなんて」

そう、いま松田たちがいるのは、〝マンガホープ〟のローンチ日に打ち上げをした中華屋さんだったのだ。

「あのときも乾杯までは幸せな気分でしたよね」

「嫌なことを思い出すなタイヨー。今日はまちがいなくずっと幸せだ」

野島がそう言ったとき、小柴のスマホが着信音を鳴らした。小柴はスマホの画面を見て眉をしかめると、周囲に「ちょっと声落として!」と声をかけてから電話に出た。

「あれ……デジャブですかね、野島さん」

松田の言葉を無視して、野島は小柴をじっと見ている。視線の先では小柴が難しい顔で電話に対応していた。そして不意に、その言葉を口にした。

「何ィ!! 飛んだって!?」

松田はその場でよろめいてしまった。まさかまたあんなことが……。
小柴が電話を切ると、その場にいた全員が小柴に詰めよった。先頭にいたのは野島だ。

「コシさん、何ですって!?」

「いや……それがな」

小柴は深刻そうな顔でビールを飲んで言った。

「我が家の軒先に巣を作ってた燕のヒナが、さっき飛び立ったっていう妻からの連絡でした~! はっはっは! みんなびっくりした?」

「イタズラ好きのマメシバがぁぁぁぁ!!」

変顔でおどける小柴に、真っ先に飛び掛かったのは松田だった。

「やって良いことと悪いことがあるでしょうがぁぁぁぁ!!」

小柴の胸ぐらをつかみ、ぐわんぐわん揺らす松田を、野島は笑いながら見ている。

「いいぞタイヨー。今日は無礼講だ」

「笑ってないで止めてくれ野島! タイヨーも落ち着いて! ツバメが低く飛んだら雨が降るっていうけど、今日は血の雨が降りそう!」

「なにうまいこと言ってんすかぁ!」

暴れる松田を周囲がはやし立て、楽しい夜は更けていった。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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