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ライジング! 第20回

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そんな野島が注文した料理は、サラダ・チキンフライ・牛肉と野菜の炒め物・焼鳥丼・ナポリタンだった。

「自分で取り分けるから、お前も自由に食えよ」

そう言って野島はサラダをバリバリ食べ始めた。見た目は静かで落ち着いた雰囲気の野島だが、食べ方は実に豪快だ。見ていると食欲が刺激されてくる。
松田はナポリタンの皿に手を伸ばした。玉ねぎとベーコンとマッシュルームを使ったシンプルなナポリタンだ。しかも上には目玉焼きが乗っている。

「これ崩して良いですか?」

「どうぞ」

野島に許可を取り、目玉焼きにフォークを突き刺すと、ツヤツヤ光る黄身がトロっと流れ出してくる。真っ赤なパスタに軽く絡めて、自分が食べる分を取り皿に分けた。

「うまそ~!」

湯気と共に独特の甘酸っぱい香りが立ち昇ってくる。松田は辛抱たまらず、フォークをパスタの山に突き立てると、くるくるっと巻いた。想像以上に大きな塊になってしまったものの、気にせず大口を開いて口に放り込む。
舌に感じる酸味と甘み。噛むとプツプツと気持ちよく切れるパスタ。マッシュルームと少し焦げたベーコンは、実にいい香りだ。入っている具材のすべてがいい仕事をしている。次は黄身が多く絡まっている部分を狙う。最初の一口よりもまろやかになり、味に深みが出ている。
あっという間にナポリタンを平らげたところで、野島が笑いながら焼鳥丼を差し出してきた。

「こっちも食え。しっかし、お前は本当にうまそうに食うな、タイヨー」

「実際うまいですから」

松田がそう言うと、野島は何かを思い出したような表情になった。

「……そう言えば昔、天神先生に褒められたことがあったな」

「そうなんですか?」

「ああ。ヤングホープの新年会だったかな。二次会は幾つかのグループに分かれるんだけど、たまたま天神先生と一緒になったんだよ」

焼鳥丼を頬張りながら、松田が頷く。

「行ったのは天神先生行きつけのバーだった。料理もうまい店だっていうんで、天神先生がたくさん注文してくれたんだよ。作家の参加するパーティーでは、編集はあいさつ回りや担当作家のアテンドで、何か食べてるような暇がないんだ。天神先生はその辺がちゃんと分かってるんだよ」

「すごい気遣いですね」

「だろ? で、その場にいた中ではオレが一番若手で、天神先生が『若いんだから遠慮せず食べろ』って言ってくれたもんだから、ガンガン食べたんだよ。ドライカレーとかクリームパスタとか照り焼きチキンとか。……まとまりのないメニューだったけど、お腹も減ってたし、片っ端から食べてった。その時に天神先生に言われたんだよ。『キミは本当にうまそうに食うな。実に食べさせがいがある』って」

当時を思い出したのか、ポーカーフェイスの野島が珍しく微笑んだ。
するとそこに、小柴が戻って来た。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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