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ライジング! 第80回

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大波出版、ヤングウェーブ編集部の編集長、上條小春は全裸でベッドにあおむけになり、掛け布団を体にかけた。今年で四十二歳。若い頃は事後でも照れずに裸体をさらしていたのだが、いつからか体を隠す癖がついている。
その癖を知ってか知らずか、隣に寝転がっていた男が布団を跳ね上げて覆いかぶさって来た。

「んもう! まだ物足りないの?」

「だってハルちゃんの体、最高なんだもん」

年下特有の甘えた声で言われると、喜びで体がゾクリとする。
上條小春は十五歳年下の部下、夢岡豊と不倫関係にあった。最初のきっかけは何だったか。覚えていないということは、酔った勢いでなんとなく……というつまらないものだったのだろう。その後は飲み会終わりでどちらから誘うともなく自然に体を重ね、この関係ももう二年になる。
最初はぎこちなく、快感などほとんど得られなかったが、若い男のタフさと学習能力はあなどれない。何度も求められ、時折偶然のように触れられた弱いポイントで声を出すと、次からは着実にそこを攻めて来る。今ではすっかり体もなじみ、若い男の荒々しい手管で簡単に達するようになっていた。

「も~いっかいしよう」

「ダ~メ」

顔を背けてキスを避け、小春は寝返りついでに夢岡の体から逃れた。応じても良かったが、まだ体のあちこちに余韻が残っている。小春はこの余韻を楽しみたかった。
不満顔の部下に微笑みかけ、小春は気をそらすように話題を変えた。

「例のアプリの件、上手くいってるの?」

「はい。問題ないです。さっきユーザーレビュー見たら、悪評がチラホラ出て来てます」

たとえ事後でも、仕事の話になると夢岡は小春に対して敬語になる。そこがまたかわいいと小春は思っていた。
夢岡はスマホを取り出し、あるアプリを立ち上げた。〝マンガホープ〟だ。

「……起動画面には行けるけど、そこから全然動かないです」

「動かないだけじゃなくて、ちゃんと〝爆弾〟も仕掛けてあるんでしょうね?」

「もちろん。氷上はもうこっちの言いなりなので」

「それならいいけど。にしても、一体あのデブに経費いくら使ったのかしら……」

小春がそう言ったとき、夢岡が持っていたスマホが着信音を鳴らした。

「誰から?」

「氷上と我々を引き合わせてくれたキューピッドからです」

夢岡が顔をしかめながら言うと、小春は悪戯っぽい笑みを見せた。

「このタイミングでかかって来るってことは、何か感づいたのかもね。もう遅いけど」

「そうですね。気の毒だけど無視しますね」

「……出なさいよ。お友だちなんでしょ?」

小春の言葉に最初は難色を示した夢岡だったが、最終的には折れて渋々スマホをタップした。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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