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ライジング! 第5回

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「ここ定額制なんだよ。一万円で飲み放題で食べ放題」

「えっ!」

「オレも最初小柴さんに連れて来てもらったときに驚いたよ。この雰囲気で食べ放題って信じられないよなぁ」

野島の言葉に小柴がニヤリと笑う。

「みんな驚くんだよ。その顔を見て飲むビールがまたうまくて……フフッ! だから遠慮なく食べて」

「は、はい!」

定額と聞いては沢山食べなければ損する気がする。根が貧乏性の松田は次々に料理を注文して、そのどれもに舌鼓を打った。
ブリ大根のブリは食べやすい大きさですぐ身がほどけ、大根は味がしみ込んでいる。そして添えられたインゲンやゆずの皮は、良いアクセントになっていた。
牛カツは、ザクッとした衣が牛肉のうまみを上手く閉じ込めており、レモンをしぼって食べると絶品だ。
チキンソテーは低温でじっくり焼いたのか、肉がうっすらピンク色を残しているのに、皮目はパリッとしている。味付けは塩のみなのだが、かえって鶏の味を濃く感じた。
きんぴらごぼうは土臭さがなく、甘めの味付けでご飯にも合いそうだ。
カマンベールチーズの味噌漬けは、チーズと味噌の塩気がバッチリで、ビールが進んで仕方がない。

「プハーーッ! おいしかった~!」

結局松田はビールの中瓶を六本あけていた。小柴や野島はどこかで焼酎に切りかえたらしく、水割りのグラスが目の前にあった。

「タイヨーはけっこう飲むタイプだな。よっしゃもう一軒だ! ……その前にトイレトイレ」

小柴が去ると、松田は野島にポツリと言った。

「小柴さんってどんな人なんですか」

「そうだな……。オレが思うあの人の一番すごい所は、独自の視点だな」

「視点?」

「そう、視点。人と違う視点で物事をよく見てるんだよ」

野島は、ほとんど氷だけになった芋焼酎の水割りで唇を湿らせた。

「例えば手品」

「手品……」

「マジシャンってのは、手元を派手に動かしてみんなの視線を集めるんだよ。その隙に別の場所でタネを仕込む。みんなは手元ばかり見ているからタネに気づかない。タネを暴こうとして一生懸命見てる人ほど騙されるってわけだ。でもコシさんは違う。あの人はタネを探す時は手元じゃなくて全体を見ているような人なんだよ」

「そうなんですね」

「色んな角度から物事を見るっていうのかなぁ。基本的には抜けた雰囲気なんだけど、その実、抜け目ない人だよ」

「へぇ」

「そう言えば……」

何かを思い出したように、野島が眉間にシワを寄せた。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。


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