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ライジング! 第59回

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小柴が壇上に呼んだのは、若手漫画家の御村ミームだった。御村は、突如として顔面がアヒルになってしまった男子高校生の日常を描く『あいつアヒル田!』をヤングホープに連載中の人気作家だ。

「御村先生、ご自身のTwitterアカウントで〝マンガホープ〟のことを呟いていただけないでしょうか! できれば今すぐ!」

「え、今ですか? でも、なるほど……面白そう。ちょっとやってみますね」

「ぜひお願いします」

御村は元々Twitterで漫画をアップしていたのだが、それが編集部の目に留まり、スカウトを経て誌面連載を始めていた。長年Twitterを利用している上に、連載前からクオリティの高い漫画を高頻度でアップしていたので、フォロワー数は驚異の四十万人だった。
御村はスマートフォンを取り出し、高速で画面をタップした。

「しましたよ~。あ、僕の漫画も読めるって書いちゃったけど、いいんですよね?」

「もちろんです!」

「あ……さっそくリツイートされてる」

携帯の画面を見ながら御村がそう言うと、すかさず小柴が会場に向けて言った。

「皆さんも、アカウントを持ってらっしゃる方はぜひお願いします! もしトレンドで一瞬でもベストテンに入ったら、ここにいるすべての作家さんに、次の打ち合わせのときにご希望の手土産をお持ちします!」

会場が「おお!」とどよめいた。小柴は場を盛り上げるのが実に上手かった。そしてヤングホープの作家陣もノリが良かった。みんながスマホを取り出して、一斉にツイートをし始めている。
壇上からその光景を見ていた松田は、ゾウゾクっと鳥肌が立つのを禁じ得なかった。

「これは……これはすごいことになりますよ!」

隣にいた野島に言うと、野島も珍しく声を上ずらせた。

「コシさん、こんなこと考えてたんだな。コストに対して宣伝効果はバツグンだな」

二人が話していると、小柴がマイクを切って近寄って来た。

「仕事納め終了っと。いや~、激動の一年だった!」

「お疲れ様です」

野島と松田が異口同音にねぎらうと、小柴は満足そうに微笑んだ。

「二人ともお疲れ。来年の仕事始めは、色んな手土産の買い集めになりそうだな」

この小柴の予想は見事的中することになった。唯一、小柴さえ予想だにしていなかったのは、〝マンガホープ〟がトレンドの一位を取ったことだった。

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この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。
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