連載小説

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ライジング! 第66回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 注文した品を全てたいらげ、松田は大満足だった。酒はいつの間にか小柴に合わせて日本酒になっていた。小柴はビールから焼酎に行き、日本酒を経て焼酎に戻る傾向にあった。松田は基本的にビールを飲みつつ、日本酒が来たら小柴に付き合う流れだ。 「けっこう飲…

ライジング! 第65回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ もう一杯ビールを飲もうかとも思ったが、せっかく目の前に立体メニューというべきお酒の棚があるのだ。ここから何かを選ぶのも良いかもしれない。 そんなことを考えていると、勘のいい女性店員さんが「何飲まれます?」と聞いて来てくれた。松田は棚を見ながら目…

ライジング! 第64回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「報告が順調すぎるんだよ」 「順調……過ぎる?」 「うん。今回みたいな大きなプロジェクトの開発って、進めていくうちに一つや二つぐらい、順調じゃない部分が出てくるもんなんだよ。でも今回はそれがない」 「良いことじゃないですか。何の心配もしなくて…

ライジング! 第63回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ カウンターに座ると、正面は格子状の棚になっており、そこに日本酒や焼酎がズラリと陳列されていた。カウンターに座った人は、メニューを見ずとも好きなお酒を注文できるので便利だ。 布地の厚いおしぼりで手を拭い、メニューを開くと細い毛筆で書かれた味のある…

ライジング! 第62回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ その日の夜、松田は小柴に飲みに誘われて有楽町に来ていた。小柴と飲むのはかなり久しぶりだった。 「タイヨーここ最近数か月、全然飲んでくれなかったからな」 「すいません。ちょっと忙しくて……」 「忙しいときやピンチのときほど飲みに行くんだぞ」 「…

ライジング! 第61回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ それは、アプリ作成が順調だということを説明する資料だった。実際にはできていない部分を「こういう感じに動きます」と説明する、いわば張りぼての資料だ。これを見せれば、打ち合わせは切り抜けられるかもしれない。しかし、現に開発は進んでいないので、その…

ライジング! 第60回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ Eセサミの新人プログラマー、郡家は不安なまま新年を迎えていた。チームに入って作業している青年漫画アプリ〝マンガホープ〟の完成が、一向に見えてこないのだ。納期に対して作業量が膨大で、ちゃんと時間内に完成させるには年末年始も休んでいる場合ではなか…

ライジング! 第59回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 小柴が壇上に呼んだのは、若手漫画家の御村ミームだった。御村は、突如として顔面がアヒルになってしまった男子高校生の日常を描く『あいつアヒル田!』をヤングホープに連載中の人気作家だ。 「御村先生、ご自身のTwitterアカウントで〝マンガホープ〟…

ライジング! 第58回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 宴もたけなわ。禁酒中の松田も「勧められた酒はノーカン」のルールのもとでワインを何杯も飲んでいた。空のグラスを持っていると、ボーイさんが「いかがですか?」とおかわりを勧めてくれるからだ。これは松田の解釈では「勧められた酒」の範疇に入る。だから飲…

ライジング! 第57回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「デジタル開発部の松田くんだよ。マメシバの差し金でうちにしつこく訪ねて来て、私の作品を電子化させてくれって頼んだ子だよ」 「ああ。キミがあの」 高津は意味ありげな視線を送り、松田のウーロン茶を取りあげて代わりに自分が持っていたワイングラスを…