連載小説

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ライジング! 第107回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ きっかけは小柴にかかって来た一本の電話だった。 「小柴編集長、ナノ&ナノの佐藤さんという方から電話です」 新人編集部員の言葉に小柴は「佐藤?」と首をかしげた。聞き覚えのない名前だが、どこかで名刺を交換していたのだろうか。 訝りながらも受話器を上…

ライジング! 第106回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 何と大将は、残った黄味醤油にイクラを混ぜたものを持って来たのだ。さらに、ふっくら炊きあげられた少量の白ご飯もついてきた。 「ごはんと一緒にどうぞ」 もう出会えないと思っていた黄味醤油が、バージョンアップして帰って来た……。思わぬ再会に感激しつ…

ライジング! 第105回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「コシさん、サッポロ派じゃなかったんですか? 僕の中では赤星とか黒ラベルのイメージなんですけど」 「ああ。いつもならそうだよ。でも最近、鮨屋に限ってはアサヒにするようにしたんだよ」 「えっ、どうしてですか?」 「鮨屋で瓶ビールは何があるか聞く…

ライジング! 第104回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 〝マンガホープ〟がローンチしてから二週間。松田は久々に小柴に飲みに誘われた。 「本当はナノ&ナノやEセサミ含めて大々的に打ち上げをやりたかったんだけど、そういう雰囲気でもなくなっちゃったから、個別でねぎらう方向にしたんだよ」 小柴は誘った理由…

ライジング! 第103回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 上條小春は焦っていた。自身が編集長を務める週刊ヤングウェーブを中心にした青年誌漫画アプリ〝まんがウェーブ〟の開発が遅れ始めたからだ。 Eセサミの氷上を使った裏工作で、照鋭社の青年誌漫画アプリ〝マンガホープ〟を終わらせ、失意の青年漫画ファンを一気…

ライジング! 第102回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「オレが新人の頃も、校了の時期になると疲れ果てて弁当がなかなか喉を通らないようなときもあったな。でも、半ば無理やり食ってた」 そう言って野島は自嘲気味に笑った。 「さっきB弁当を思い出の味って言ったけどな、決していい思い出ばかりじゃないんだよ…

ライジング! 第101回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 大きなお盆に味噌汁と漬物、そして木製の四角い箱が乗っていたのだ。 「野島さん、これ……弁当箱ですよね?」 「そう。店内でも弁当箱で提供されるんだよ」 「へえ~!」 ふたを開けると、中にはブリの照り焼きとヒレカツが入っていた。自宅では決して同時…

ライジング! 第100回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 店内は大衆食堂のような雰囲気で広々としており、二階もあるようだ。夜営業が始まったばかりだからか、お客さんの姿はまだない。 お好きな席へと言われ、野島は一階の奥の席へと向かった。迷いのない足取りから察するに、いつも座る席が決まっているようだった。…

ライジング! 第99回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「そしたら電話口の人が、『氷上もプロジェクトのメンバーも、全員体調不良で休みです』って」 「それはいやはや……なかなかの対応だな」 小柴が目を見開くと、野島は逆に目をすがめた。 「ナメてるんですかね、我々を」 松田は怒りをあらわにする野島に背…

ライジング! 第98回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「ど、どういうことですか!?」 松田がパソコン画面と河原崎の間に顔を挟み込むと、ようやく彼と目が合った。 「Eセサミから電話ってことは、匿名のタレコミでしょ。その人がメンテはダメだと言っていた。つまり、メンテナンスにはトラップが仕掛けられてい…