連載小説

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ライジング! 第62回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ その日の夜、松田は小柴に飲みに誘われて有楽町に来ていた。小柴と飲むのはかなり久しぶりだった。 「タイヨーここ最近数か月、全然飲んでくれなかったからな」 「すいません。ちょっと忙しくて……」 「忙しいときやピンチのときほど飲みに行くんだぞ」 「…

ライジング! 第61回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ それは、アプリ作成が順調だということを説明する資料だった。実際にはできていない部分を「こういう感じに動きます」と説明する、いわば張りぼての資料だ。これを見せれば、打ち合わせは切り抜けられるかもしれない。しかし、現に開発は進んでいないので、その…

ライジング! 第60回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ Eセサミの新人プログラマー、郡家は不安なまま新年を迎えていた。チームに入って作業している青年漫画アプリ〝マンガホープ〟の完成が、一向に見えてこないのだ。納期に対して作業量が膨大で、ちゃんと時間内に完成させるには年末年始も休んでいる場合ではなか…

ライジング! 第59回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 小柴が壇上に呼んだのは、若手漫画家の御村ミームだった。御村は、突如として顔面がアヒルになってしまった男子高校生の日常を描く『あいつアヒル田!』をヤングホープに連載中の人気作家だ。 「御村先生、ご自身のTwitterアカウントで〝マンガホープ〟…

ライジング! 第58回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 宴もたけなわ。禁酒中の松田も「勧められた酒はノーカン」のルールのもとでワインを何杯も飲んでいた。空のグラスを持っていると、ボーイさんが「いかがですか?」とおかわりを勧めてくれるからだ。これは松田の解釈では「勧められた酒」の範疇に入る。だから飲…

ライジング! 第57回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「デジタル開発部の松田くんだよ。マメシバの差し金でうちにしつこく訪ねて来て、私の作品を電子化させてくれって頼んだ子だよ」 「ああ。キミがあの」 高津は意味ありげな視線を送り、松田のウーロン茶を取りあげて代わりに自分が持っていたワイングラスを…

ライジング! 第56回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 師も走るほど忙しいと言われている師走だが、出版社も師に負けず劣らず忙しくなる。年末年始は印刷所を含めた業界全体が休みに入るので、十二月前半に作業を前倒しして行うからだ。このスケジュールは〝年末進行〟と言われ、特に雑誌編集者はあわただしい時間を…

ライジング! 第55回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「いただきます!」 松田は油あげを少し脇によけつつ、うどんに箸をくぐらせた。麺を持ち上げるとボワっと湯気が立ち、一瞬だけ視界が閉ざされる。少し冷ました方がいいと思うのだが、もう我慢できない。松田はやけども恐れず一気に「ズババババ!」とうどんを…

ライジング! 第54回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ (そうだ……そうだよ!) 松田は確信した。 きっと野島は、待つことの楽しさを教えてくれたのだ。 ついさっき自分は、ローンチ日が迫って来る心境を「導火線に火がつけられて、爆発するのを待っているようだ」と言った。待っているのが破滅だと決めつけてそう…

ライジング! 第53回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 実は食欲のなかった松田だったが、野島の話を聞いた後ではそんなことは言い出しにくかった。気にかけてくれた野島のためにも、嘘でも食欲のある振りをしなければ、という謎の使命感が松田の口を動かす。 「えっと、栄養満点でガツンとパンチが効いてて……でも…