連載小説

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ライジング! 第71回

〝マンガホープ〟リリース日を三週間後に控えた二月初旬。照鋭社の二〇九会議室は重苦しい空気に包まれていた。松田たちを始め、ヤングホープの編集部員も協力して細かくチェックして出していたバグをつぶす作業が、全く行われていないことが発覚したのだ。 「本当にすいません」 平身低頭で謝る氷上…

ライジング! 第70回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 紙には八十八種類の願いがぎっしりと書かれていた。 無病息災・家内安全・商売繁盛・開運招福・学業成就などのオーソドックスなものから、航海安全・無事帰還・雨乞祈願・芸道上達・勝訴祈願といったピンポイントな願いもある。中には国家安泰・世界平和といった…

ライジング! 第69回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「タイヨー! どうしてここに!?」 「舞台俳優やってる友だちがこの辺の劇場で舞台やるっていうんで来てみたら、日付がちがってたんですよ。でもせっかく来たから、前に行ったことのあるお店でご飯でも食べようと思ったんですが、場所が微妙に思い出せなくて…

ライジング! 第68回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「厄除けって、どこですればいいんですか?」 小柴の質問に夕子さんは少し逡巡してから、ある神社の名前を口にした。 「今週の土曜日に行ってきなさい。占いでは、その日に行くと良いと出てるわ。行って悪い運命を変えてくるのよ」 「でもその日は妻と出かけ…

ライジング! 第67回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 二月二日、小柴は一人でなじみの薄い街の駅前に立っていた。というのも、行きつけのスナック〝かえで〟で気になることを言われたからだ。 小柴はそのときのことを思い出していた。 「小柴さん占いに興味ありますか?」 最近キャストとして入った、夕子(ゆうこ…

ライジング! 第66回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 注文した品を全てたいらげ、松田は大満足だった。酒はいつの間にか小柴に合わせて日本酒になっていた。小柴はビールから焼酎に行き、日本酒を経て焼酎に戻る傾向にあった。松田は基本的にビールを飲みつつ、日本酒が来たら小柴に付き合う流れだ。 「けっこう飲…

ライジング! 第65回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ もう一杯ビールを飲もうかとも思ったが、せっかく目の前に立体メニューというべきお酒の棚があるのだ。ここから何かを選ぶのも良いかもしれない。 そんなことを考えていると、勘のいい女性店員さんが「何飲まれます?」と聞いて来てくれた。松田は棚を見ながら目…

ライジング! 第64回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ 「報告が順調すぎるんだよ」 「順調……過ぎる?」 「うん。今回みたいな大きなプロジェクトの開発って、進めていくうちに一つや二つぐらい、順調じゃない部分が出てくるもんなんだよ。でも今回はそれがない」 「良いことじゃないですか。何の心配もしなくて…

ライジング! 第63回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ カウンターに座ると、正面は格子状の棚になっており、そこに日本酒や焼酎がズラリと陳列されていた。カウンターに座った人は、メニューを見ずとも好きなお酒を注文できるので便利だ。 布地の厚いおしぼりで手を拭い、メニューを開くと細い毛筆で書かれた味のある…

ライジング! 第62回

前の話へ / 連載TOPへ / 次の話へ その日の夜、松田は小柴に飲みに誘われて有楽町に来ていた。小柴と飲むのはかなり久しぶりだった。 「タイヨーここ最近数か月、全然飲んでくれなかったからな」 「すいません。ちょっと忙しくて……」 「忙しいときやピンチのときほど飲みに行くんだぞ」 「…